Beyond Prayers, the Tomorrow We Wish for Is.../Story/Chapter 5

From Sekaipedia
——うん。着付けはこれで問題なさそう。
みんなは大丈夫?
みのり
は、遥ちゃんの巫女さん……!
ううう~! 神様ありがとうございます~!
愛莉
みのり、今日のアンタはファンじゃなくて巫女なんだから
しっかりしなさい!
そうね。今からベテランの巫女さんから
作法を教えてもらえるみたいだし……
ベテラン巫女
お待たせしました。
皆さん、今日は榎本の代わりに来てくださって、
ありがとうございます
いいえ。こちらこそいつも榎本さんにはお世話になっているので。
今日はよろしくお願いします
みのり・愛莉・雫
『よろしくお願いします!』
ベテラン巫女
ふふ、聞いたとおり、しっかりしたお嬢さんがたですね。
それでは早速、業務内容と作法についてお話しましょう
みんな
『はい!』
みのり
えーっと、参拝者への挨拶は、
『ようこそお参りくださいました』で、
お守りとかを売る時は——
愛莉
みのり、売るんじゃなくて“頒布”よ
みのり
あ、そうだった!
神様の力をお配りする……みたいな意味だよね!
愛莉
ええ。お守りやお札を渡す場所が『授与所』っていうのも、
神様のものを授かる場所だかららしいわ
ふふ、神社ならではの言葉があって
おもしろいわよね
お金をもらう時も『お納めください』って言ったりね。
言い慣れないから気をつけないと
そういえば——みんな、担当する場所は覚えた?
みのり
うんっ!
わたしはおみくじ!
愛莉
わたしはみのりと同じ授与所で、
お守りやお札を頒布する係ね
私はお神酒と甘酒をふるまう係よ
うん。大丈夫そうだね。
私は参拝者の案内と連絡係だから、
何かあったらすぐに私に言って。社務所の人に伝えるから
休憩はみのりと雫が朝4時から、私と愛莉が5時から。
みんな、寒いから風邪をひかないように、
しっかりカイロを貼って頑張ろうね
みのり
うん! ……えへへ、
遥ちゃんがリーダーになってくれてよかったな!
え? リーダー?
ええ。さっきの巫女さんも言ってたもの。
一番しっかりしてそうだから、案内役と連絡役を任せるって。
それってリーダーってことじゃないかしら?
愛莉
そうね! それに、見所があるって言われてなかった?
……ふふ、ありがとうみんな。
今日はリーダーとして頑張るよ
あと30分でスタートだね。
そろそろ用意しようか
みのり
うん! あ……もうあっちにお参りに来た人達が
並んでるよ
早いわねえ。
やっぱり一番にお参りしたいのかしら?
愛莉
もしかしたら、大きなお願いごとがあるのかもしれないわね!
大きな願いごとか……
みのり
……遥ちゃん? どうしたの?
あ、ごめん、ボーっとしちゃって。
いろいろ昔のことを思いだしてたんだ
みのり
昔のこと……?
アイドルを目指し始めた、
本当に最初の頃のことだよ
実は私、アイドルを目指し始めた頃から何回も、
この神社にお参りに来てたんだ
そうだったの?
うん。小学校3年生の時にアイドルになろうって思って、
毎朝のランニングを始めるようになったんだ
それから毎朝、アイドルになれますようにって
ここでお参りしてたの
愛莉
へえ……! ちょっと意外ね。
遥って神頼みするイメージがあんまりなかったわ。
自分の力でなんとかするタイプっていうか……
ふふ、よく言われるな
もちろん、努力して、自分の力でアイドルになろうって
思ってたよ
でも、人との縁や、タイミングや……。
そういうものがあるから、扉が開くことがあるでしょ?
だから、そういう自分ひとりではどうにもならないことは、
せめて神様にお願いしようって思ったの
みのり
それでほんとにアイドルになって、
センターにまでなれちゃうなんて……! さすが遥ちゃん!
愛莉
ほんっと昔っからストイックでブレないわね、遥は
ブレないってことはないよ。
結構不安になることも多かったしね
ASRUNのセンターに決まった時なんて、
緊張で眠れなくなったりしたんだよ
そうだったのね……
みのり
い、意外……!
遥ちゃんでもそんなことがあるんだね……!
うん。本当にセンターとしてやれるのかっていう不安とか、
それでもやりきらなきゃいけないっていう気負いがあって……
その時も、この神社に来たんだ
…………
……はぁ
(駄目だ……。
いつもなら、ここでお参りすれば気持ちが切り替えられるのに、
今日はずっと胸が苦しい……)
(来週から全国ツアーがあって、
そのあとはレギュラー番組も始まって……)
(本当に、私がセンターを務められるのかな……)
巫女
あの——すみません。
このハンカチ、落とされませんでしたか?
えっ? あ……。
はい、私のハンカチです。ありがとうございます
お手水の時に落としちゃったのかも。
大切なものなので助かりました
巫女
いえ、持ち主が見つかってよかったです
本当にありがとうございました。
それじゃあ、失礼します
巫女
——きっと、聞き届けてくれると思いますよ
……え?
巫女
すみません。
先ほどとても熱心にお参りされていたので、つい
巫女
神様は、心からの真剣な願いを、きっと聞き届けてくれます。
だから——ひとりではないですよ
…………!
巫女
……差し出がましいことを言ってすみません。
それでは
ひとりじゃない……
(センターとしてファンの期待に応えられるか
ずっと不安になっていたけど……)
(——ASRUNは、ひとりじゃない。
みんながそばにいてくれる。それなら——)
あ、あの……!
巫女
あ……はい
……ありがとうございます。
私、ひとりで背負いすぎるところでした
ちゃんとみんなと一緒に——頑張ろうと思います
あの、もしよかったら、
お名前を聞いてもいいですか?
その時の巫女さんが、榎本さんだったの
榎本さんにもらった一言で肩に入ってた力が抜けて——、
できることを全力でやればいいんだって
ちゃんと思えるようになったんだ
みのり
そんなことがあったんだ……!
愛莉
“背中を押してくれた人”って言ってたのは、
そういうことだったのね
うん。
榎本さんは、明るい未来に向かって進もうとしている人達を
見守れることが嬉しいって言っていたから……
私も今日、そんな風に、みんなの願いを見守りたい。
それでもしできるのなら、少しでも力になりたいって思うんだ
なら、今日はみんなで見守っていきましょう?
ここに来る、たくさんの人達の願いを
愛莉
ふふっ、みんなどんな願いごとをしに来るのかしらね?
みのり
なんだかワクワクしてきたね!
みんな、早く準備しに行こうよっ!
——うん!
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