Connecting Painful Hope/Story/Chapter 8

From Sekaipedia
乃々木公園
Kiritani Haruka
Haruka
(……昔のことを話してると、どんどん思い出すな。
ASRUNを辞めるまでのこと)
Kiritani Haruka
Haruka
(どんなに頑張っても、もがいても、
どうにもならなくて——)
Kiritani Haruka
Haruka
どうして……!?
病院にもかよって、練習でもちゃんと踊れたのに……!
Kiritani Haruka
Haruka
なんでステージに立とうとすると、
足が動かないの……?
マネージャー
……本当に、いいのね? 遥
Kiritani Haruka
Haruka
…………はい
Kiritani Haruka
Haruka
私はもう……アイドルを続けられません……
遥の母親の声
……遥。
そろそろ夕飯の時間よ。みんなで食べない?
Kiritani Haruka
Haruka
……ごめん、お母さん。
今は……ひとりにしてほしい……
遥の母親の声
……わかったわ。
食べたくなったら、いつでも言ってね
Kiritani Haruka
Haruka
うん。ありがとう……
Kiritani Haruka
Haruka
…………
Kiritani Haruka
Haruka
……っ
Kiritani Haruka
Haruka
ごめん……なさい……
Kiritani Haruka
Haruka
ごめんなさい……!!
長谷川
…………!
Kiritani Haruka
Haruka
あの時は本当に苦しくて、苦しくて……。
本当に、世界が灰色に見えました
長谷川
……そう、だったんですね……
長谷川
でも……本当によかったです。
桐谷さんが、またアイドルとして
ステージに立てるようになって……
Kiritani Haruka
Haruka
ありがとうございます
Kiritani Haruka
Haruka
私は運よく——本当に運よく、
みのり達のおかげで、またステージに立てるようになりました
Kiritani Haruka
Haruka
でも、みんながみんな、
そういう風に立ち直れるわけじゃないだろうということも、
よくわかります
長谷川
…………
Kiritani Haruka
Haruka
ただひとつ、私に言えることがあるなら——
Kiritani Haruka
Haruka
想いは、消そうとしても簡単には消えないっていうことです
長谷川
……想い?
Kiritani Haruka
Haruka
はい。
私なら、アイドルが大好きで大好きで、
たくさんの人に希望を届けたいっていう——その気持ちのことです
Kiritani Haruka
Haruka
一度は、諦めて、消そうとしました。
でも……消えてくれなかった
Kiritani Haruka
Haruka
そういう気持ちは——
誰にでもあるんじゃないかなって思うんです。
きっと、長谷川さんにも
Kiritani Haruka
Haruka
ひどいことを言われても、つらい目にあっても、
長谷川さんは曲を作り続けようとしてる
Kiritani Haruka
Haruka
それは——みんなに希望を届けたいっていう、
大切な想いがあるからじゃないですか?
長谷川
あ……
長谷川
『それで私も、自分の曲で“明日をがんばる希望”を
聴いてくれるみんなに届けたいなって思ってるんです……!』
長谷川
『希望を届けたいって思って曲を作ってたのに、
私の曲が、いろんな人を傷つけてる気がして……』
長谷川
『頭では作りたいって思ってるんですけど、
どうしても手が動かないんです……!』
長谷川
…………っ
Kiritani Haruka
Haruka
……いっそ、この想いが消えてしまえば、
こんなに苦しまなくてすむのに
Kiritani Haruka
Haruka
……なんて、思いますよね
Kiritani Haruka
Haruka
消えない想いとどう向きあうのか。
その方法は……きっと人によって違うと思います
Kiritani Haruka
Haruka
多分、抱えたまま苦しむ人もいれば、
長い時間をかけて、ちょっとずつ風化させようとする人も
いるんじゃないかなって思うんです
長谷川
…………
長谷川
……桐谷さんは、どうやって向きあったんですか?
Kiritani Haruka
Haruka
私は——
Kiritani Haruka
Haruka
MORE MORE JUMP!のみんなのおかげで
向きあうことができました
Kiritani Haruka
Haruka
みんなが、自分ひとりで抱えこまなくていいんだって
教えてくれたんです
Kiritani Haruka
Haruka
だから……
Kiritani Haruka
Haruka
今度は私が、長谷川さんにとっての
MORE MORE JUMP!になりたいと思ってます
長谷川
え……
Kiritani Haruka
Haruka
想いとどう向きあうかは長谷川さん次第だと思います。
だけど……だからといって、ひとりで苦しむ必要はないんです
Kiritani Haruka
Haruka
苦しい時は、いつでも頼ってください。
私にできることは全力でやります
長谷川
できる、こと……?
Kiritani Haruka
Haruka
はい。例えば——
Kiritani Haruka
Haruka
こちょこちょこちょこちょ!
長谷川
ひゃっ!? は、遥ちゃ……っ!
あははははっ……!
Kiritani Haruka
Haruka
ふふっ、こうやって全力で笑顔にしちゃいますよ
Kiritani Haruka
Haruka
なんて、今のは冗談ですけど……。
長谷川さんが前を向けるようになるまで、
私も一緒に悩んで、考えます
Kiritani Haruka
Haruka
だから——いつでも頼ってください
長谷川
遥ちゃん……
長谷川
……ありがとうございます。
やっぱり、桐谷さんはすごいアイドルだな……
Kiritani Haruka
Haruka
——アイドルとして言ってるわけじゃないんだよ
長谷川
え?
Kiritani Haruka
Haruka
たしかに私達は知り合ったばかりだし、
一緒に仕事をするために連絡してる。
さっきも、作ってもらう曲の話をしてたしね
Kiritani Haruka
Haruka
でも、私は……ただの仕事仲間だとは思ってない
Kiritani Haruka
Haruka
だって私は、長谷川さんの——里帆の作る曲で、
笑顔になれたから
Kiritani Haruka
Haruka
だから、里帆の曲のファンとして、
今度は私にお返しさせてほしいんだ
長谷川
……遥ちゃん……
長谷川
……ありがとう。
本当に……ありがとう……
長谷川
私……もう一度、考えてみるね……
Kiritani Haruka
Haruka
うん。
——待ってるよ
みのりの声
遥ちゃーん!!
Kiritani Haruka
Haruka
あ、みのり……
Momoi Airi
Airi
お疲れさま、遥。
こっちから話は聞こえなかったけど……
長谷川さん、すごく真剣に聞いてくれてたみたいね
Hinomori Shizuku
Shizuku
遥ちゃんの気持ちは、伝えられた?
Kiritani Haruka
Haruka
……うん。
私が伝えられることは、全部伝えられたと思う
Momoi Airi
Airi
そう。それならあとは、待つだけね
Hanasato Minori
Minori
……うん!
2週間後
宮益坂女子学園 屋上
Kiritani Haruka
Haruka
今日は次のライブに向けて考えていこうか
Hanasato Minori
Minori
うんっ!
前みたいに、イベント会場とか、規模感とか決めていくんだよね
Momoi Airi
Airi
ええ! あとは、今回は歌メインでやるライブだから、
前以上にしっかりセトリを考えていきたいわね
Kiritani Haruka
Haruka
そうだね。オリジナル曲は難しいかもしれないから
カバー曲を増やすとか、他の曲で盛り上げていこう
Hinomori Shizuku
Shizuku
……そうね
Hinomori Shizuku
Shizuku
……長谷川さんは、どうしているのかしらね……
Kiritani Haruka
Haruka
…………
Kiritani Haruka
Haruka
少しでも、回復してくれてるといいな……
Hanasato Minori
Minori
そうだね……。
あれからメールも来てないし……あれ?
Hanasato Minori
Minori
——長谷川さん!?
Kiritani Haruka
Haruka
えっ?
Hanasato Minori
Minori
長谷川さんからメールが来てる!
わ、わたし、開いてみるね!
Momoi Airi
Airi
なんて書いてあるの!?
Hanasato Minori
Minori
えっと——
長谷川
『先日はありがとうございました』
長谷川
『遥ちゃんが話しに来てくれた日から、
ひとりでたくさん考えてみました』
長谷川
『私の曲で誰かを傷つけてしまうことが怖くて、
曲を作ること自体が苦しくなってしまいました。でも……』
長谷川
『考えて考えて……私は、どんなに苦しくても、
曲を作ることだけは諦めたくないと思えました』
長谷川
『本当に、ありがとうございます。遥ちゃん』
長谷川
『まだ酷いことを言われる時もありますけど……。
ちゃんと応援してくれる人達を大事にして、
がんばっていこうと思います』
Kiritani Haruka
Haruka
…………
Hanasato Minori
Minori
あ、まだ続きがあるみたい!
『最後に、あの曲を完成させたのでお送りします』……!?
Hanasato Minori
Minori
『私のことを支えてくださった皆さんへ、
感謝の気持ちもこめて作りました。
気に入るものになっていたら嬉しいです』
Hanasato Minori
Minori
……だって!
Hinomori Shizuku
Shizuku
まあ、どんな曲になっているのかしら
Momoi Airi
Airi
よーしみのりっ! 今すぐ再生よ!
Hanasato Minori
Minori
了解ですっ!
再生っ!
Momoi Airi
Airi
……!
最初の時より、もっとグッとくる曲になってるわ!
Hinomori Shizuku
Shizuku
希望を届けたいっていう私達と長谷川さんの気持ちが
ひとつになったみたいね!
Hanasato Minori
Minori
うんっ! これも遥ちゃんのおかげだね!
さすが遥ちゃ……ん……
Kiritani Haruka
Haruka
本当に、よかった……
Hinomori Shizuku
Shizuku
遥ちゃん……
Hanasato Minori
Minori
うっ……!
遥ちゃん……うううう~!
Momoi Airi
Airi
もう……。
なんでアンタまで泣いてんのよ
Hanasato Minori
Minori
だ、だって……!
長谷川さんが元気になってすごく嬉しいし——
Hanasato Minori
Minori
遥ちゃんって本当に本当に、ファンのために全力な、
最高のアイドルなんだなって思ったらつい……!
Hinomori Shizuku
Shizuku
それはたしかに、間違いないわね!
Momoi Airi
Airi
それじゃ——オリジナル曲も作ってもらえたことだし、
あとはライブに向かって一直線に進みましょっ!
Kiritani Haruka
Haruka
うん。
みんな——頑張ろう!!
雫・みのり
『うん!』
『ええ!』
里帆の部屋
長谷川
あ、MORE MORE JUMP!のみんなからメールだ
Kiritani Haruka
Haruka
『最高の曲を、ありがとう!』
長谷川
……ふふっ。
次の曲も、がんばらなくっちゃ!
Kiritani Haruka
Haruka
あ……
長谷川
『遥ちゃんのおかげで、次の曲のイメージもわいてきました。
また曲を作らせてくださいね!』
Kiritani Haruka
Haruka
(……ASRUNを辞めた時、私は、
本当にたくさんの人を悲しませた)
Kiritani Haruka
Haruka
(その後悔はずっと、今も——心の中に残ってるけど)
Kiritani Haruka
Haruka
(あの時の記憶も、
誰かの希望につなげていくことができるんだね)
Kiritani Haruka
Haruka
(嬉しいことだけじゃない。
つらいことも、苦しいことも、全部抱きしめて——)
Kiritani Haruka
Haruka
(みんなに希望を、届けていこう!!)

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