乃々木公園
Haruka
(……昔のことを話してると、どんどん思い出すな。
ASRUNを辞めるまでのこと)
ASRUNを辞めるまでのこと)
Haruka
(どんなに頑張っても、もがいても、
どうにもならなくて——)
どうにもならなくて——)
Haruka
どうして……!?
病院にもかよって、練習でもちゃんと踊れたのに……!
病院にもかよって、練習でもちゃんと踊れたのに……!
Haruka
なんでステージに立とうとすると、
足が動かないの……?
足が動かないの……?
マネージャー
……本当に、いいのね? 遥
Haruka
…………はい
Haruka
私はもう……アイドルを続けられません……
遥の母親の声
……遥。
そろそろ夕飯の時間よ。みんなで食べない?
そろそろ夕飯の時間よ。みんなで食べない?
Haruka
……ごめん、お母さん。
今は……ひとりにしてほしい……
今は……ひとりにしてほしい……
遥の母親の声
……わかったわ。
食べたくなったら、いつでも言ってね
食べたくなったら、いつでも言ってね
Haruka
うん。ありがとう……
Haruka
…………
Haruka
……っ
Haruka
ごめん……なさい……
Haruka
ごめんなさい……!!
長谷川
…………!
Haruka
あの時は本当に苦しくて、苦しくて……。
本当に、世界が灰色に見えました
本当に、世界が灰色に見えました
長谷川
……そう、だったんですね……
長谷川
でも……本当によかったです。
桐谷さんが、またアイドルとして
ステージに立てるようになって……
桐谷さんが、またアイドルとして
ステージに立てるようになって……
Haruka
ありがとうございます
Haruka
私は運よく——本当に運よく、
みのり達のおかげで、またステージに立てるようになりました
みのり達のおかげで、またステージに立てるようになりました
Haruka
でも、みんながみんな、
そういう風に立ち直れるわけじゃないだろうということも、
よくわかります
そういう風に立ち直れるわけじゃないだろうということも、
よくわかります
長谷川
…………
Haruka
ただひとつ、私に言えることがあるなら——
Haruka
想いは、消そうとしても簡単には消えないっていうことです
長谷川
……想い?
Haruka
はい。
私なら、アイドルが大好きで大好きで、
たくさんの人に希望を届けたいっていう——その気持ちのことです
私なら、アイドルが大好きで大好きで、
たくさんの人に希望を届けたいっていう——その気持ちのことです
Haruka
一度は、諦めて、消そうとしました。
でも……消えてくれなかった
でも……消えてくれなかった
Haruka
そういう気持ちは——
誰にでもあるんじゃないかなって思うんです。
きっと、長谷川さんにも
誰にでもあるんじゃないかなって思うんです。
きっと、長谷川さんにも
Haruka
ひどいことを言われても、つらい目にあっても、
長谷川さんは曲を作り続けようとしてる
長谷川さんは曲を作り続けようとしてる
Haruka
それは——みんなに希望を届けたいっていう、
大切な想いがあるからじゃないですか?
大切な想いがあるからじゃないですか?
長谷川
あ……
長谷川
『それで私も、自分の曲で“明日をがんばる希望”を
聴いてくれるみんなに届けたいなって思ってるんです……!』
聴いてくれるみんなに届けたいなって思ってるんです……!』
長谷川
『希望を届けたいって思って曲を作ってたのに、
私の曲が、いろんな人を傷つけてる気がして……』
私の曲が、いろんな人を傷つけてる気がして……』
長谷川
『頭では作りたいって思ってるんですけど、
どうしても手が動かないんです……!』
どうしても手が動かないんです……!』
長谷川
…………っ
Haruka
……いっそ、この想いが消えてしまえば、
こんなに苦しまなくてすむのに
こんなに苦しまなくてすむのに
Haruka
……なんて、思いますよね
Haruka
消えない想いとどう向きあうのか。
その方法は……きっと人によって違うと思います
その方法は……きっと人によって違うと思います
Haruka
多分、抱えたまま苦しむ人もいれば、
長い時間をかけて、ちょっとずつ風化させようとする人も
いるんじゃないかなって思うんです
長い時間をかけて、ちょっとずつ風化させようとする人も
いるんじゃないかなって思うんです
長谷川
…………
長谷川
……桐谷さんは、どうやって向きあったんですか?
Haruka
私は——
Haruka
MORE MORE JUMP!のみんなのおかげで
向きあうことができました
向きあうことができました
Haruka
みんなが、自分ひとりで抱えこまなくていいんだって
教えてくれたんです
教えてくれたんです
Haruka
だから……
Haruka
今度は私が、長谷川さんにとっての
MORE MORE JUMP!になりたいと思ってます
MORE MORE JUMP!になりたいと思ってます
長谷川
え……
Haruka
想いとどう向きあうかは長谷川さん次第だと思います。
だけど……だからといって、ひとりで苦しむ必要はないんです
だけど……だからといって、ひとりで苦しむ必要はないんです
Haruka
苦しい時は、いつでも頼ってください。
私にできることは全力でやります
私にできることは全力でやります
長谷川
できる、こと……?
Haruka
はい。例えば——
Haruka
こちょこちょこちょこちょ!
長谷川
ひゃっ!? は、遥ちゃ……っ!
あははははっ……!
あははははっ……!
Haruka
ふふっ、こうやって全力で笑顔にしちゃいますよ
Haruka
なんて、今のは冗談ですけど……。
長谷川さんが前を向けるようになるまで、
私も一緒に悩んで、考えます
長谷川さんが前を向けるようになるまで、
私も一緒に悩んで、考えます
Haruka
だから——いつでも頼ってください
長谷川
遥ちゃん……
長谷川
……ありがとうございます。
やっぱり、桐谷さんはすごいアイドルだな……
やっぱり、桐谷さんはすごいアイドルだな……
Haruka
——アイドルとして言ってるわけじゃないんだよ
長谷川
え?
Haruka
たしかに私達は知り合ったばかりだし、
一緒に仕事をするために連絡してる。
さっきも、作ってもらう曲の話をしてたしね
一緒に仕事をするために連絡してる。
さっきも、作ってもらう曲の話をしてたしね
Haruka
でも、私は……ただの仕事仲間だとは思ってない
Haruka
だって私は、長谷川さんの——里帆の作る曲で、
笑顔になれたから
笑顔になれたから
Haruka
だから、里帆の曲のファンとして、
今度は私にお返しさせてほしいんだ
今度は私にお返しさせてほしいんだ
長谷川
……遥ちゃん……
長谷川
……ありがとう。
本当に……ありがとう……
本当に……ありがとう……
長谷川
私……もう一度、考えてみるね……
Haruka
うん。
——待ってるよ
——待ってるよ
みのりの声
遥ちゃーん!!
Haruka
あ、みのり……
Airi
お疲れさま、遥。
こっちから話は聞こえなかったけど……
長谷川さん、すごく真剣に聞いてくれてたみたいね
こっちから話は聞こえなかったけど……
長谷川さん、すごく真剣に聞いてくれてたみたいね
Shizuku
遥ちゃんの気持ちは、伝えられた?
Haruka
……うん。
私が伝えられることは、全部伝えられたと思う
私が伝えられることは、全部伝えられたと思う
Airi
そう。それならあとは、待つだけね
Minori
……うん!
2週間後
宮益坂女子学園 屋上
宮益坂女子学園 屋上
Haruka
今日は次のライブに向けて考えていこうか
Minori
うんっ!
前みたいに、イベント会場とか、規模感とか決めていくんだよね
前みたいに、イベント会場とか、規模感とか決めていくんだよね
Airi
ええ! あとは、今回は歌メインでやるライブだから、
前以上にしっかりセトリを考えていきたいわね
前以上にしっかりセトリを考えていきたいわね
Haruka
そうだね。オリジナル曲は難しいかもしれないから
カバー曲を増やすとか、他の曲で盛り上げていこう
カバー曲を増やすとか、他の曲で盛り上げていこう
Shizuku
……そうね
Shizuku
……長谷川さんは、どうしているのかしらね……
Haruka
…………
Haruka
少しでも、回復してくれてるといいな……
Minori
そうだね……。
あれからメールも来てないし……あれ?
あれからメールも来てないし……あれ?
Minori
——長谷川さん!?
Haruka
えっ?
Minori
長谷川さんからメールが来てる!
わ、わたし、開いてみるね!
わ、わたし、開いてみるね!
Airi
なんて書いてあるの!?
Minori
えっと——
長谷川
『先日はありがとうございました』
長谷川
『遥ちゃんが話しに来てくれた日から、
ひとりでたくさん考えてみました』
ひとりでたくさん考えてみました』
長谷川
『私の曲で誰かを傷つけてしまうことが怖くて、
曲を作ること自体が苦しくなってしまいました。でも……』
曲を作ること自体が苦しくなってしまいました。でも……』
長谷川
『考えて考えて……私は、どんなに苦しくても、
曲を作ることだけは諦めたくないと思えました』
曲を作ることだけは諦めたくないと思えました』
長谷川
『本当に、ありがとうございます。遥ちゃん』
長谷川
『まだ酷いことを言われる時もありますけど……。
ちゃんと応援してくれる人達を大事にして、
がんばっていこうと思います』
ちゃんと応援してくれる人達を大事にして、
がんばっていこうと思います』
Haruka
…………
Minori
あ、まだ続きがあるみたい!
『最後に、あの曲を完成させたのでお送りします』……!?
『最後に、あの曲を完成させたのでお送りします』……!?
Minori
『私のことを支えてくださった皆さんへ、
感謝の気持ちもこめて作りました。
気に入るものになっていたら嬉しいです』
感謝の気持ちもこめて作りました。
気に入るものになっていたら嬉しいです』
Minori
……だって!
Shizuku
まあ、どんな曲になっているのかしら
Airi
よーしみのりっ! 今すぐ再生よ!
Minori
了解ですっ!
再生っ!
再生っ!
Airi
……!
最初の時より、もっとグッとくる曲になってるわ!
最初の時より、もっとグッとくる曲になってるわ!
Shizuku
希望を届けたいっていう私達と長谷川さんの気持ちが
ひとつになったみたいね!
ひとつになったみたいね!
Minori
うんっ! これも遥ちゃんのおかげだね!
さすが遥ちゃ……ん……
さすが遥ちゃ……ん……
Haruka
本当に、よかった……
Shizuku
遥ちゃん……
Minori
うっ……!
遥ちゃん……うううう~!
遥ちゃん……うううう~!
Airi
もう……。
なんでアンタまで泣いてんのよ
なんでアンタまで泣いてんのよ
Minori
だ、だって……!
長谷川さんが元気になってすごく嬉しいし——
長谷川さんが元気になってすごく嬉しいし——
Minori
遥ちゃんって本当に本当に、ファンのために全力な、
最高のアイドルなんだなって思ったらつい……!
最高のアイドルなんだなって思ったらつい……!
Shizuku
それはたしかに、間違いないわね!
Airi
それじゃ——オリジナル曲も作ってもらえたことだし、
あとはライブに向かって一直線に進みましょっ!
あとはライブに向かって一直線に進みましょっ!
Haruka
うん。
みんな——頑張ろう!!
みんな——頑張ろう!!
雫・みのり
『うん!』
『ええ!』
『ええ!』
里帆の部屋
長谷川
あ、MORE MORE JUMP!のみんなからメールだ
Haruka
『最高の曲を、ありがとう!』
長谷川
……ふふっ。
次の曲も、がんばらなくっちゃ!
次の曲も、がんばらなくっちゃ!
Haruka
あ……
長谷川
『遥ちゃんのおかげで、次の曲のイメージもわいてきました。
また曲を作らせてくださいね!』
また曲を作らせてくださいね!』
Haruka
(……ASRUNを辞めた時、私は、
本当にたくさんの人を悲しませた)
本当にたくさんの人を悲しませた)
Haruka
(その後悔はずっと、今も——心の中に残ってるけど)
Haruka
(あの時の記憶も、
誰かの希望につなげていくことができるんだね)
誰かの希望につなげていくことができるんだね)
Haruka
(嬉しいことだけじゃない。
つらいことも、苦しいことも、全部抱きしめて——)
つらいことも、苦しいことも、全部抱きしめて——)
Haruka
(みんなに希望を、届けていこう!!)