< Live with memories | Story
咲希
いっちゃーん！
一歌
あ、みんな……！
志歩
もう。急に飛び出して行ったと思ったら、
あんなことするなんて……驚いたよ
あんなことするなんて……驚いたよ
一歌
ご、ごめん。
気づいたらつい……
気づいたらつい……
花乃
れ、Leo/needの皆さん……！？
どうしてこんなところに……
どうしてこんなところに……
咲希
さっき、たまたま見かけたの。
それで気づいたら、いっちゃんがピューって飛び出してって！
それで気づいたら、いっちゃんがピューって飛び出してって！
穂波
うん、びっくりしたけど……。
ふたりとも無事でよかった
ふたりとも無事でよかった
花乃
そうだったんですか……。
あ、あの、皆さんも心配して下さってありがとうございます！
あ、あの、皆さんも心配して下さってありがとうございます！
花乃
それから星乃さんも……。
この前は、ぶつかっちゃってすみませんでした……
この前は、ぶつかっちゃってすみませんでした……
一歌
あ……
花乃
……！
す、すみません！
す、すみません！
一歌
あの時、私だって気づいてたんだ。
えっと……花乃ちゃん、だよね
えっと……花乃ちゃん、だよね
花乃
え？ どうして名前を……
一歌
実は、この前のライブが終わったあと
お兄さんと話す機会があって、その時に教えてもらったんだ
お兄さんと話す機会があって、その時に教えてもらったんだ
花乃
兄と……？
一歌
えっと……あんまりここにひとりでいると危ないよ。
これからもっと暗くなるし
これからもっと暗くなるし
花乃
そうですね……。
でも、その……ちょっと……
でも、その……ちょっと……
一歌
（やっぱり、帰りづらいのかな……）
花乃
あの……この前、兄から何か聞きましたか？
一歌
え？ あ……。
うん、実は少し
うん、実は少し
一歌
だから、花乃ちゃんが帰りたくない理由も少しだけ知ってるんだ
花乃
そうだったんですね……
花乃
その……お兄ちゃん、なんて言ってましたか？
一歌
え？
花乃
……お兄ちゃんからメッセージが届いたんですけど、
いっぱい心配かけちゃったし、
怒ってるんじゃないかって思ったら……読めなくて……
いっぱい心配かけちゃったし、
怒ってるんじゃないかって思ったら……読めなくて……
咲希
ううん！ 怒ってなんてなかったよ！
むしろすごく心配してたし！
むしろすごく心配してたし！
一歌
うん。
お兄さん、花乃ちゃんのことを
すごく大事にしてるんだなって思ったよ
お兄さん、花乃ちゃんのことを
すごく大事にしてるんだなって思ったよ
一歌
この前も、自分のせいで花乃ちゃんが
つらい思いをしてるんじゃないかって言ってたし——
つらい思いをしてるんじゃないかって言ってたし——
花乃
え…………
花乃
お兄ちゃん……本当にバカだな……
花乃
お兄ちゃんのせいでつらいなんて……。
そんなこと、全然、一度もないのに……
そんなこと、全然、一度もないのに……
一歌
花乃ちゃん……
花乃
私……Leo/needのことも、
お兄ちゃんがあのライブハウスに
連れてってくれたから知れたんです
お兄ちゃんがあのライブハウスに
連れてってくれたから知れたんです
花乃
うちの両親が離婚するって決まった時に、
気分転換にって、私をライブに連れてってくれて——
気分転換にって、私をライブに連れてってくれて——
花乃
皆さんの曲をすごくかっこいいねって言ったら、
それから毎回、忙しい時も連れて行ってくれて……！
それから毎回、忙しい時も連れて行ってくれて……！
一歌
……そうだったんだ……
花乃
家族のことだって……お兄ちゃんがいるから
向きあえないわけじゃないんです
向きあえないわけじゃないんです
花乃
ただ、受け入れちゃったら、お兄ちゃんと
どんどん離れていっちゃうような気がして……、
怖くて……！
どんどん離れていっちゃうような気がして……、
怖くて……！
穂波
あ……
穂波
——はい、ハンカチだよ。使って
花乃
……っ。
すみません……洗って返します……
すみません……洗って返します……
穂波
ううん、大丈夫だよ。
気にしないで
気にしないで
花乃
……本当は、わかってるんです
花乃
お兄ちゃんは私のためを思って、
会うのをやめようって言ってくれてるんだって
会うのをやめようって言ってくれてるんだって
花乃
わかってるけど、やっぱり……苦しくて……
志歩
…………
花乃
でも、……でも……
花乃
……きょうだいだからって、
いつまでも一緒にいられるわけじゃないんですよね……
いつまでも一緒にいられるわけじゃないんですよね……
花乃
いつかは絶対に離れなくちゃいけない時がきて……。
……今がきっと、その時なんですよね……
……今がきっと、その時なんですよね……
一歌
それは……
一歌
（……花乃ちゃんも、
お兄さんの気持ちを理解して、離れようと思ってるんだ）
お兄さんの気持ちを理解して、離れようと思ってるんだ）
一歌
（それはたしかに、お互いにとって、
必要なことなんだろうけど……でも……）
必要なことなんだろうけど……でも……）
一歌
（本当に……それでいいの？）
花乃
……ごめんなさい、急に泣いちゃって。
皆さんに話を聞いてもらったら、
ちょっと落ち着きました
皆さんに話を聞いてもらったら、
ちょっと落ち着きました
咲希
……本当に大丈夫？
花乃
はい。
私……これからはちゃんと家に帰ろうと思います。
これ以上お兄ちゃんを困らせたくないですし
私……これからはちゃんと家に帰ろうと思います。
これ以上お兄ちゃんを困らせたくないですし
花乃
ご迷惑おかけして、すみません。
本当に、ありがとうございました
本当に、ありがとうございました
一歌
あ……
花乃
もうお兄ちゃんとは行けないけど……。
皆さんのライブ、また見に行きますね！
皆さんのライブ、また見に行きますね！
花乃
それじゃあ……失礼します
一歌
あ…………あの！！
花乃
え？
一歌
その——
一歌
——最後に、お兄さんとふたりで、
私達のライブを見に来てくれないかな？
私達のライブを見に来てくれないかな？
花乃
え……兄と、ですか？
一歌
うん。再来週にライブがあって……！
あと１回だけでいいから、ふたりで見に来てほしいの
あと１回だけでいいから、ふたりで見に来てほしいの
花乃
ありがとうございます……。
でも、どうしてそんな……？
でも、どうしてそんな……？
一歌
え？
えっと、それは……
えっと、それは……
咲希
——アタシ達から、ライブをプレゼントさせてほしいなって
思ったの！ ね、いっちゃん！
思ったの！ ね、いっちゃん！
一歌
咲希……！
一歌
……うん。ファンになってもらえて、本当に嬉しかったから。
もうふたりで来れないなら、せめて最後に
感謝の気持ちをこめて、ライブをプレゼントしたいなって
もうふたりで来れないなら、せめて最後に
感謝の気持ちをこめて、ライブをプレゼントしたいなって
穂波
ふたりにいつも聴いてもらえてたから、
わたし達も頑張れてたんだしね
わたし達も頑張れてたんだしね
志歩
そうだね。今までで一番いい演奏をするから、
来てくれないかな
来てくれないかな
花乃
……わかりました。
まだ会ってくれるかわからないですけど……。
兄に、聞いてみようと思います
まだ会ってくれるかわからないですけど……。
兄に、聞いてみようと思います
一歌
……！ ありがとう！
花乃
いえ、こちらこそありがとうございます。
では……さようなら
では……さようなら
一歌
……みんなありがとう。
突然ライブに来てなんて言い出しちゃったのに、
フォローしてくれて……
突然ライブに来てなんて言い出しちゃったのに、
フォローしてくれて……
咲希
えへへっ！
アタシもいっちゃんと同じ気持ちだったから！
アタシもいっちゃんと同じ気持ちだったから！
志歩
だね。
なんだか、放っておけなくてさ
なんだか、放っておけなくてさ
穂波
うん……わたしも
穂波
大事なのに……大事だから離れなきゃいけないなんて、
すごく、つらいだろうから……
すごく、つらいだろうから……
咲希
うん……
咲希
でも、ちょっとでもつらい気持ちが減るように……
アタシ達にできることをやりたいよね！
アタシ達にできることをやりたいよね！
一歌
できることを……
一歌
……ねえみんな。あんまり時間はないんだけど、
その……私、曲を作ってもいいかな？
その……私、曲を作ってもいいかな？
志歩
え？
一歌
……曲ひとつじゃ、どうにもならないかもしれないけど
一歌
でも、ふたりの悲しい気持ちがちょっとでも少なくなるように、
できることをしたいなって思うんだ
できることをしたいなって思うんだ
一歌
作曲はまだ勉強中だから、
みんなに手伝ってもらわなきゃいけないと思うけど……。
ちゃんと歌詞から書いて、仕上げたい
みんなに手伝ってもらわなきゃいけないと思うけど……。
ちゃんと歌詞から書いて、仕上げたい
志歩
……一歌らしくていいと思うよ。
ただしやるからには、半端なものにはしないからね
ただしやるからには、半端なものにはしないからね
一歌
う、うん！
咲希
ねえ、いっちゃん！
曲はアタシにも一緒に考えさせてくれない？
花乃ちゃん達のためにがんばりたいもん！
曲はアタシにも一緒に考えさせてくれない？
花乃ちゃん達のためにがんばりたいもん！
一歌
わかった……！
咲希、お願いね
咲希、お願いね
穂波
じゃあわたしは、
これから先のスケジュールを立ててみるね！
これから先のスケジュールを立ててみるね！
一歌
ありがとう、みんな
一歌
次のライブ——頑張ろう！