Ena's Room
Ena
んー……
Mafuyu
『このイラスト、色が汚いね』
Ena
『あのね! この色はドロッドロした感情を表現したいから あえてこういう色にしてるの!』
Mafuyu
『そうなんだ。よくわからなかった』
Mafuyu
『……ここ、線が歪んでて気になる』
Ena
『それもあえて!』
Mafuyu
『そうなんだ。よくわからなかった』
Ena
ほんっと、ムカつく。 私がこだわって描いたとこもわかんないなんて……!
Ena
まあ、KとAmiaは別に何も言ってなかったし。 雪がわかんないだけなら、気にしなくても――
Ena
…………
Ena
でも、曲のイメージに直結するところだし、 もうちょっとブラッシュアップしてもいいかな……
Mizuki
『ねえねえ、K! MVのラストなんだけど、ちょっと見てくれない?』
Mizuki
『ラフからまるっと変えてみたんだよね。 こっちの方がエモいかなーって思ってさ!』
Kanade
『うん、いいと思う』
Mizuki
『やった~! じゃあこの方向で進めるね♪』
Ena
『…………』
Mafuyu
『…………』
Mizuki
『そういえば、今日ナイトコード静かじゃない? ねえ、えななん~』
Ena
『…………』
Mizuki
『あれ、いる? もしかして、喋ってるけどミュートになってるとか?』
Ena
『…………』
Kanade
『オンラインにはなってるから、集中してるのかな』
Mizuki
『なーんか、えななんが静かだと落ち着かないな~』
Mizuki
『ま、いろいろ言うと“うるさい!”って言われそうだし ボクもMV仕上げちゃおーっと』
Mafuyu
『…………』
Ena
『……よし、できた!』
Mizuki
『うわっ、びっくりした~! えななん急にどうしたの!?』
Ena
『Amia、大げさすぎ。 イラストのブラッシュアップが終わっただけ』
Mizuki
『あー、雪にめちゃくちゃダメ出しされてた新曲のやつ?』
Ena
『改めて言わなくていいから! ほんと、思い出すだけでムカつくし』
Mizuki
『でも、悔しかったから直したんでしょ? えななんって負けず嫌いだよね~』
Ena
『うるっさい!』
Ena
『ほら、雪。ナイトコードにデータ送ったから見て』
Mafuyu
『…………』
Mizuki
『へ~、結構印象変わったね』
Ena
『まあね。基本的には、前のイラストと変わってないけど。 ドロドロした感情を表現する色合いを、 もっと細かく変化させてみたの』
Ena
『ほら、嫉妬と憎しみってどっちもマイナスだけど違うでしょ? そのあたりの違いも出してみたんだよね』
Mafuyu
『……汚い』
Ena
『はぁ!?』
Mafuyu
『どっちともいえない感情が、 ドロドロしてるんだなっていうのはわかった』
Mafuyu
『線も歪んでるけど、これはあんまり気にならない』
Ena
『ふふん、そうでしょ?』
Mafuyu
『でも、全体のバランスはやっぱり変』
Ena
『なっ……!』
Ena
『これは、今にも理性失って、 渦巻く感情で爆発するかもしれないっていう アンバランスさの表現なの!』
Ena
『もう……! なんでこのニュアンスが伝わらないわけ!?』
Mizuki
『まーまー、ボクは前よりわかりやすくなったと思うよ?』
Ena
『雪にもわかってもらえないと、 ブラッシュアップした意味がないでしょ!』
Kanade
『……!』
Mizuki
『出た! えななんのツンデレ!』
Ena
『はあ!? なんでそういう発想になるの!?』
Mafuyu
『…………』
Kanade
『――ふふっ』
Mizuki
『ほら、Kにも笑われてるよー?』
Ena
『ちょっ……K? 今笑うとこじゃないんだけど』
Kanade
『ごめん。でも、楽しそうだと思って』
Mizuki
『あははっ、わかるわかる!』
Mizuki
『ちょっと前まではえななん、 本気で雪にイライラしてたのにね』
Mizuki
『まぁ、今もイライラはしてるんだろうけどさ。 でも、なんか楽しそうだよね』
Kanade
『そうだね』
Ena
『た……楽しくなんてないから!』