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雫
ええと、あの頃のお月見の写真は……
このアルバムに入っているかしら?
このアルバムに入っているかしら?
雫
まあ、しぃちゃんが赤ちゃんの頃の写真だわ。
とっても可愛い……!
とっても可愛い……!
雫
こっちはひな祭りをした時の写真ね。
まんまるのひなあられが可愛いって、
ずっと食べずに飾っていたのよね
まんまるのひなあられが可愛いって、
ずっと食べずに飾っていたのよね
雫
そういえば、この頃はおそろいの服を着ていたわね。
髪型も一緒にしたりして……
髪型も一緒にしたりして……
雫
うふふ、『お姉ちゃんと一緒がいい』って
言ってくれるしぃちゃんが、本当に可愛くて——
言ってくれるしぃちゃんが、本当に可愛くて——
志歩の声
お姉ちゃん、そろそろ夕飯
雫
あら、しぃちゃん!
わざわざ呼びに来てくれたの?
わざわざ呼びに来てくれたの?
志歩
何度も呼んでるのに全然来ないからでしょ。
……って、何見てるの?
……って、何見てるの?
雫
うふふ、小さい頃のアルバムよ
雫
実は今日、部活が終わったあとに
朝比奈さんに相談に乗ってもらっていたの
朝比奈さんに相談に乗ってもらっていたの
志歩
朝比奈さん……?
ああ、あの目立つ弓道部の人か
ああ、あの目立つ弓道部の人か
雫
ええ、とっても頼りになる人なのよ
雫
それでね。朝比奈さんと話しているうちに、
小さい頃、しぃちゃんと一緒にした
お月見のことを思いだしたの
小さい頃、しぃちゃんと一緒にした
お月見のことを思いだしたの
志歩
お月見……
雫
ええ、あの時の写真が見たくて探していたんだけど、
どの写真のしぃちゃんも可愛くて……!
どの写真のしぃちゃんも可愛くて……!
志歩
はいはい
志歩
……念のために聞くけど、
その写真、誰かに見せるつもりじゃないよね?
その写真、誰かに見せるつもりじゃないよね?
雫
ええと、今のところは考えていないけれど……
雫
そうだわ! せっかくだし、
朝比奈さんに写真を見てもらって
しぃちゃんのことを知ってもらうのはどうかしら!
朝比奈さんに写真を見てもらって
しぃちゃんのことを知ってもらうのはどうかしら!
志歩
絶対にやめて。
朝比奈先輩だって、いきなり私の話をされても困るでしょ
朝比奈先輩だって、いきなり私の話をされても困るでしょ
雫
そうかしら?
でも、しぃちゃんこんなに可愛いのに……。
ほらこの時なんて、お口にソースをつけて——
でも、しぃちゃんこんなに可愛いのに……。
ほらこの時なんて、お口にソースをつけて——
志歩
その写真、誰かに見せたら
もうお姉ちゃんと口利かないから
もうお姉ちゃんと口利かないから
雫
ええ!? そんな……
雫
……でも、懐かしいわ。
小さい頃はいつも一緒に遊んでいたわよね
小さい頃はいつも一緒に遊んでいたわよね
志歩
……そうだったっけ
雫
ええ、たとえば……そうね。
小さい頃、おばあちゃんと公園で
お母さんを待っていた時の話なんだけど——
小さい頃、おばあちゃんと公園で
お母さんを待っていた時の話なんだけど——
祖母
あら、志歩ちゃんは何を作っているのかしら?
幼い志歩
……砂のお山
幼い雫
大きいお山ね。
しぃちゃん、すごいわ♪
しぃちゃん、すごいわ♪
幼い志歩
おねえちゃん、そっちから手を入れて
幼い雫
こうかしら?
幼い志歩
うん。そしたら、こうやって砂をどけて、と……
幼い志歩
——できた!
幼い雫
わあ、すごーい!
お山のなかから、しぃちゃんのお顔が見えるわ
お山のなかから、しぃちゃんのお顔が見えるわ
幼い志歩
おねえちゃんの顔もみえるよ
幼い雫
ふふ、すてきなお山さんね。
しぃちゃんが作ったから、お名前はしぃちゃん山かしら
しぃちゃんが作ったから、お名前はしぃちゃん山かしら
幼い志歩
……そのなまえはやだ
幼い雫
ええっ、とってもすてきなお名前なのに……
祖母
ふふ、志歩ちゃんは恥ずかしいのよね
幼い志歩
……うん。
つけるなら、おねえちゃんのなまえにして
つけるなら、おねえちゃんのなまえにして
幼い雫
私の名前でいいの?
ふふ、ありがとう!
ふふ、ありがとう!
幼い雫
しぃちゃんはすごいわね。
おねえちゃんの知らない遊びを
いっぱい知ってるもの
おねえちゃんの知らない遊びを
いっぱい知ってるもの
幼い雫
ねえ、しぃちゃん。
お母さんがお仕事から帰ってくるまで、
もっとおねえちゃんにいろんな遊びを教えて?
お母さんがお仕事から帰ってくるまで、
もっとおねえちゃんにいろんな遊びを教えて?
幼い志歩
うん、いいよ
幼い志歩
じゃあつぎは、砂でおだんごを作って——
幼い雫
わあ、いっぱいお団子さんできたわね
祖母
まあ、本当。志歩ちゃんも雫ちゃんも上手ねえ。
本物と間違えちゃいそうだわ
本物と間違えちゃいそうだわ
幼い志歩
……それはないと思うけど……
幼い雫
ねえ、しぃちゃん。次は何をして遊ぶ?
幼い志歩
んと、じゃあ……
???
志歩ちゃん、雫ちゃん!
幼い志歩
——……あ!
母親
遅くなっちゃってごめんなさいね。
琴のお仕事が長引いちゃって……
琴のお仕事が長引いちゃって……
幼い志歩・雫
『お母さん……!』
母親
ふたりとも、寂しくなかった?
幼い雫
大丈夫。しぃちゃんとおばあちゃんと3人で
一緒に遊んでいたもの
一緒に遊んでいたもの
幼い雫
ね、しぃちゃん!
幼い志歩
うん……!
母親
ふふ、ふたりとも本当に仲がいいのね
母親
おばあちゃんも、見ていてくれてありがとう
祖母
いいのよ。私も一緒になって遊んじゃったわ♪
幼い雫
あのね、お母さん。
おばあちゃんの作ったお団子、とっても上手だったのよ
おばあちゃんの作ったお団子、とっても上手だったのよ
幼い志歩
おねえちゃんも、じょうずだった
幼い雫
ありがとう♪
でも、しぃちゃんは私よりも
もっともーっと上手だったわ
でも、しぃちゃんは私よりも
もっともーっと上手だったわ
母親
うふふ、じゃあ今日は
志歩ちゃんと雫ちゃんに
夕飯のお手伝いをしてもらおうかしら
志歩ちゃんと雫ちゃんに
夕飯のお手伝いをしてもらおうかしら
幼い雫
やりたーい!
母親
それじゃあ、急いで家に帰りましょうか。
今日の夕飯はハンバーグよ
今日の夕飯はハンバーグよ
幼い志歩
ハンバーグ……!
幼い雫
一緒においしいハンバーグ作りましょうね、しぃちゃん
幼い志歩
うん……!
雫
あのあと、ふたりでハンバーグをこねこねしたのよね。
いつもより、とっても美味しく感じられたわ……
いつもより、とっても美味しく感じられたわ……
志歩
……そんなことあったっけ
雫
ええ。あの頃のしぃちゃんは
お姉ちゃん、お姉ちゃんって可愛いくって……
お姉ちゃん、お姉ちゃんって可愛いくって……
雫
あ、ほら! お月見の写真があったわ。
懐かしいわねえ、しぃちゃんが幼稚園で初めて
お月見のイベントをやった時の写真で——
懐かしいわねえ、しぃちゃんが幼稚園で初めて
お月見のイベントをやった時の写真で——
志歩
わかったから。
……もう、小さい頃の話はいいでしょ?
……もう、小さい頃の話はいいでしょ?
雫
もちろん、今のしぃちゃんだって
可愛いと思ってるわ!
可愛いと思ってるわ!
志歩
そういう話をしてるんじゃないんだけど。
ていうか、そろそろ行かないと——
ていうか、そろそろ行かないと——
母親の声
志歩ちゃん、雫ちゃん、ごはんよー
志歩
……ほら、母さんが呼んでる。
私、先に行くから
私、先に行くから
雫
あ、待って! しぃちゃん
志歩
今度は何? 写真ならもう十分——
雫
ねえ、今年は久しぶりに、
一緒にお月見をしない?
一緒にお月見をしない?
志歩
……え?
雫
小さい頃は家族で一緒にしていたけれど、
最近は全然していなかったでしょう?
最近は全然していなかったでしょう?
雫
だから久しぶりに、子供の頃みたくお月見したいなぁって。
……どうかしら?
……どうかしら?
志歩
…………
志歩
……ごめん、今は練習に集中したいの
雫
しぃちゃん……
志歩
もうすぐ、Leo/needの初ライブがあるから。
一緒にプロになるって言ってくれたみんなとのライブに
全力を尽くしたいんだ
一緒にプロになるって言ってくれたみんなとのライブに
全力を尽くしたいんだ
志歩
……だから、ごめん
雫
ううん、いいのよ。
残念だけど、しぃちゃんの夢だものね
残念だけど、しぃちゃんの夢だものね
雫
頑張って、しぃちゃん。
応援してるわ
応援してるわ
志歩
……ありがと
雫
しぃちゃん、毎日頑張ってるものね……
雫
(このあいだまで、ちょっと悩んだりしていたけど……。
夢に向かって努力しているしぃちゃんは、
今までよりもずっと楽しそうだわ)
夢に向かって努力しているしぃちゃんは、
今までよりもずっと楽しそうだわ)
雫
(大変なこともたくさんあるはずなのに、
しっかりと前を向いて——)
しっかりと前を向いて——)
雫
……ふふ、私も頑張らないとね