The Two Moon Rabbits/Story/Chapter 6

From Sekaipedia
志歩
お姉ちゃん、ちょっといい?
あら、しぃちゃん!
いらっしゃい、どうしたの?
志歩
ん、実はちょっと話したいことがあって……って、ちょっと。
話してる最中にくっつこうとしないでよ
あ、ごめんなさい!
しぃちゃんが話しかけてくれるのが嬉しくて、つい……
志歩
もう……
志歩
まあ、話っていっても大した用じゃないんだけど
志歩
実は……って、あれ?
志歩
お姉ちゃん、手に持ってるのって何?
『お月見企画』……?
あ、これはね。
次の生配信の企画をまとめたものなの
志歩
あ……アイドルの
ええ! 次の企画、私がまとめることになったのよ。
よかったら見てみる?
志歩
え……いいの?
もちろん、どうぞ
志歩
ありがとう
志歩
へえ……すごいな
志歩
企画の内容と、どんな準備がいるのか……。
それに当日の流れまで決めてるんだ
ええ、決めておかないと
本番中、次に何をすればいいのか
わかんなくなっちゃったりするから
あ、愛莉ちゃん達は全然大丈夫なのよ?
私がおろおろしちゃうだけで……
志歩
まあ、想像できるよ
や、やっぱりそうかしら……
志歩
……でも、すごいね。
これ、全部お姉ちゃんが考えたの?
ええ、いつもはメンバーの子に
企画を考えてもらってばかりだから……
みんなみたいにうまくできるかわからないけれど、
配信を見にきてくれているファンの子達のために
私ができることを頑張りたいの
志歩
ファンのために……
ミオ
プロになったら、“好き”だけじゃ通用しなくなるって、
イオリちゃんに言われたんです
ミオ
どんな時も音楽と、聴いてくれるファンを優先しなきゃいけない。
自分達の作る音楽に、責任を持たなきゃいけないって
志歩
……そうですね
志歩
……私が思う“責任”は、ステージの上で
常にベストな音楽を届けていくことだと思う
志歩
その時落ちこんでいても、体調が悪くても、
ライブに来てくれたお客さんには関係ないから
志歩
…………
志歩
(お姉ちゃんも、夢に向かって頑張ってるんだ。
私と同じように——)
志歩
(……いや、違う)
志歩
(お姉ちゃんは夢を追ってるわけじゃない。
プロのアイドルとして、責任を果たしてる)
志歩
(支えてくれる人がいるのを理解するのも、
観客に最高のパフォーマンスを届けるのも、
全部……プロとしての姿勢)
志歩
……すごいな、お姉ちゃんは
え、すごいって……何が?
志歩
ううん、なんでもない
志歩
お姉ちゃん、頑張ってるなって思っただけ
え……
志歩
な、なに?
し、しぃちゃんにそう言ってもらえるなんて……!
志歩
ちょ、大げさだって。
ていうか、すぐくっつかないで
だって、すごく嬉しいんだもの!
大好きなしぃちゃんに応援してもらえたなら、
私、どれだけでも頑張れるわ!
志歩
もう、わかったってば……。
ほんと大げさすぎ
志歩
(……でも……)
志歩
(……小さい頃の私は、
お姉ちゃんのこれに、いつも支えてもらってたんだよね)
志歩
(…………もしかしたら、小さい頃だけじゃなくて——)
志歩
…………
そういえば……。
しぃちゃん、何か用事があったんじゃないの?
志歩
……あ……
志歩
(一緒にお月見しよう、と思ったけど——)
志歩
(アイドルとして頑張ってるお姉ちゃんを
邪魔したくないな……)
志歩
——ごめん、なんでもなかった
そう……?
志歩
それよりお姉ちゃん、企画まとめなくていいの?
あっ、そうね。ずっとこうしていたいけど……
みんなのためにも、企画をまとめないといけないわね
志歩
うん。
……ねぇ、お姉ちゃん
なぁに?
志歩
企画作り、頑張って
しぃちゃん……
……ええ、ありがとう!
ふふ、しぃちゃんに応援してもらったんだから、
もっともっと頑張らないとね

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