センター街
Airi
周りを気にしないで声を出せるように
カラオケに来たのはいいけど——
カラオケに来たのはいいけど——
Airi
なーんで臨時休業中なのよ~!
Haruka
電気工事してるみたいだね……
Minori
このタイミングで……。
はっ、もしかして、わたしの運が悪いから……!?
はっ、もしかして、わたしの運が悪いから……!?
Shizuku
きっとたまたまよ、みのりちゃん
気にしなくて大丈夫よ
気にしなくて大丈夫よ
Shizuku
そうだ、他のカラオケ屋さんでやるのはどうかしら?
周りにもいくつかあるみたいだし
周りにもいくつかあるみたいだし
Airi
この辺、日曜はほとんど埋まってるのよね……。
あっちのカラオケも、入口からお客さんはみ出してるでしょ?
だから、いつも使ってる穴場に来たっていうのに……
あっちのカラオケも、入口からお客さんはみ出してるでしょ?
だから、いつも使ってる穴場に来たっていうのに……
Haruka
スタジオも今の時間、埋まっちゃってるみたいだね。
それにもうすぐ——
それにもうすぐ——
長谷川
あ、み、皆さーん!
Minori
長谷川さんだ!
長谷川
おまたせしました!
きょ、今日はよろしくお願いします!
きょ、今日はよろしくお願いします!
Haruka
改めてよろしくお願いします、長谷川さん。
ただ、せっかく来ていただいたところ申し訳ないんですけど……
ただ、せっかく来ていただいたところ申し訳ないんですけど……
長谷川
え?
長谷川
なるほど……。そういうことなら仕方ないですね
Haruka
せっかく足を運んでもらったのに、ごめんなさい
長谷川
いえ! 私は家も近いので、全然大丈夫です!
Minori
はぁ……。
今日はせっかく朝早起きして声出ししてきたのになぁ……
今日はせっかく朝早起きして声出ししてきたのになぁ……
Airi
もう、仕方ないでしょ?
また今度、時間を合わせて調べましょ
また今度、時間を合わせて調べましょ
長谷川
あ……
長谷川
あの……もしよかったら、
私の部屋でやりますか?
私の部屋でやりますか?
Shizuku
え? 長谷川さんの?
長谷川
はい……!
私の部屋、機材はそれなりにあるので
声域を調べるくらいならできると思います
私の部屋、機材はそれなりにあるので
声域を調べるくらいならできると思います
Shizuku
でも、本当にいいのかしら。
おうちにご家族もいるんじゃ……
おうちにご家族もいるんじゃ……
長谷川
今日はちょうど、出払っているので大丈夫です。
ただ、狭い部屋なので……皆さんがそれでもよければ……
ただ、狭い部屋なので……皆さんがそれでもよければ……
Haruka
(……アイドルとしては、まだ顔を合わせたばかりの人の家に
お邪魔するのは避けたほうがいいと思うけど……)
お邪魔するのは避けたほうがいいと思うけど……)
長谷川
『それで私も、自分の曲で“明日をがんばる希望”を
聴いてくれるみんなに届けたいなって思ってるんです……!』
聴いてくれるみんなに届けたいなって思ってるんです……!』
Haruka
……ねえ、みんなが問題なければ、
お邪魔させてもらおうと思うけど……どうかな?
お邪魔させてもらおうと思うけど……どうかな?
Airi
もちろん、こんなありがたい話はないわ。
長谷川さん、よろしくお願いします!
長谷川さん、よろしくお願いします!
雫・みのり
『よろしくお願いします!』
長谷川
……はい!
里帆の部屋
長谷川
ど、どうぞ……。
あの、狭いんですけど、
お好きなところに座ってもらって大丈夫です
あの、狭いんですけど、
お好きなところに座ってもらって大丈夫です
Minori
おじゃまします!
あ、ほんとにいろんな機械がある!
あ、ほんとにいろんな機械がある!
Airi
敷いてあるのも防音マットみたいだし、
ちょっとしたスタジオみたいだわ
ちょっとしたスタジオみたいだわ
長谷川
そ、そんな……全部お年玉で買える程度のものですし……
長谷川
えと……じゃ、さっそく声域を調べさせてもらいますね!
Minori
はーいっ!!
Minori
ふへー……。つかれた……
Haruka
お疲れさま、みのり。
はい、お水だよ
はい、お水だよ
Minori
ありがとう遥ちゃん……。
はぁ……低い声全然出せなかったな……
はぁ……低い声全然出せなかったな……
長谷川
でも、花里さんは高音がよく出てましたよ
長谷川
日野森さんは透明感があってウィスパーボイスが綺麗ですし、
桃井さんは中音域がすごくパワフルでパンチがありますし——
桃井さんは中音域がすごくパワフルでパンチがありますし——
長谷川
はる……桐谷さんはどの音域でも凛とした声をしていて、
やっぱり、皆さんとてもすごいなって思いました
やっぱり、皆さんとてもすごいなって思いました
Airi
そう考えると、わたし達の声はそれぞれ個性が違うから、
いろんな曲を歌えそうよね
いろんな曲を歌えそうよね
Haruka
ふふ、そうだね
長谷川
私も、皆さんの声の良さを活かせる曲を作れるように
頑張りますね!
頑張りますね!
Shizuku
ええ!
ありがとう、長谷川さん!
ありがとう、長谷川さん!
Minori
でも、すごいよね!
すぐメロディーも思いついちゃうし、
わたし達の声の高さに合わせて作ってくれるし!
すぐメロディーも思いついちゃうし、
わたし達の声の高さに合わせて作ってくれるし!
Haruka
うん、作れる曲の幅が広いというか……。
明るいメロディーだけじゃなくて、
いろんなパターンを提案してくれるしね
明るいメロディーだけじゃなくて、
いろんなパターンを提案してくれるしね
長谷川
あ、ありがとうございます。
作曲歴がほんの少し長いだけなので、
そこまですごいわけじゃないんですけど……
作曲歴がほんの少し長いだけなので、
そこまですごいわけじゃないんですけど……
Airi
そうだったんですね、なんだかちょっと納得だわ。
ちなみに、いつ頃から曲を作ってるんですか?
ちなみに、いつ頃から曲を作ってるんですか?
長谷川
えっと、一応小学生の時に、
親のタブレットに入ってるアプリでちょっとだけ作ってて……
親のタブレットに入ってるアプリでちょっとだけ作ってて……
長谷川
でも、本格的に作るようになったのは、
中学に上がってからですね
中学に上がってからですね
長谷川
それも——実は、桐谷さんのおかげなんです
Haruka
え、私の?
長谷川
私、なんとなくいい曲が作れればいいなって感じで
作曲してたんですけど、なんだかうまくいかなくて
作曲してたんですけど、なんだかうまくいかなくて
長谷川
まあ、遊びで作ってた程度だったので、
こんなものかな……って思ってたんです
こんなものかな……って思ってたんです
長谷川
そんな時に中学に入ったんですけど、
ちょっと意地悪する子に目をつけられちゃって……。
なかなか友達ができなかったんです
ちょっと意地悪する子に目をつけられちゃって……。
なかなか友達ができなかったんです
Minori
あ……
長谷川
でも、桐谷さんが——ASRUNがいてくれたから
『もしかしたら明日はいいことがあるかもしれないし、
学校に行こう!』って思えたんです
『もしかしたら明日はいいことがあるかもしれないし、
学校に行こう!』って思えたんです
長谷川
そしたら給食の時間にASRUNの曲が流れて……。
一緒の班の子と、その話で盛り上がって友達になれたんです
一緒の班の子と、その話で盛り上がって友達になれたんです
長谷川
それで、仲良くなった子達とASRUNのことを話したり、
私が作った曲を聴いてもらったりしてるうちに、
意地悪な子とも仲良くなれて……
私が作った曲を聴いてもらったりしてるうちに、
意地悪な子とも仲良くなれて……
Shizuku
よかった……
長谷川
えへへ……。私、あの時本当に、
桐谷さんとASRUNの曲に助けられたんです
桐谷さんとASRUNの曲に助けられたんです
長谷川
それから、本格的に作曲を勉強するようになりました。
ASRUNが私に希望を届けてくれたみたいに——
ASRUNが私に希望を届けてくれたみたいに——
長谷川
私も、誰かに希望を届けられる曲を作りたいなと思って……
Haruka
長谷川さん……
Haruka
(——嬉しいな)
Haruka
(私が届けた希望が、誰かの心の中で膨らんで
また新しい希望を届けてくれていたなんて……)
また新しい希望を届けてくれていたなんて……)
Minori
……は、長谷川さん~!
長谷川
え? わ! ど、どうしたんですか花里さん!
Minori
長谷川さんの気持ち、すっごくよくわかります!!
わたしもつらい時、遥ちゃん達にすっごく励まされて……っ!
だからわたしもって思って……っ!
わたしもつらい時、遥ちゃん達にすっごく励まされて……っ!
だからわたしもって思って……っ!
Haruka
——長谷川さん。
長谷川さんの曲が完成したら、精一杯、心をこめて歌います
長谷川さんの曲が完成したら、精一杯、心をこめて歌います
Haruka
これから一緒に——希望を届けていきましょう!
長谷川
……! はいっ!
長谷川
私……絶対に、皆さんの初ワンマンライブに
ふさわしい曲を作るので——よろしくお願いします!
ふさわしい曲を作るので——よろしくお願いします!
みのり・愛莉・雫
『はい!』
長谷川
『あ……ここなんですけど、音を変えてもいいですか?
少し暗い印象になって、モモジャンらしさから
遠ざかってしまいそうなので』
少し暗い印象になって、モモジャンらしさから
遠ざかってしまいそうなので』
Haruka
たしかにそうですね。
もう少し明るいメロディーだと嬉しいです
もう少し明るいメロディーだと嬉しいです
長谷川
『歌詞の方向性はどうしましょう?
ひとつめとふたつめなら、どちらがいいですか?』
ひとつめとふたつめなら、どちらがいいですか?』
愛莉・雫
『わたしはひとつめがいいと思うわ!』
『私はふたつめが素敵だと思うわ!』
『私はふたつめが素敵だと思うわ!』
愛莉・雫
『……あら?』
Minori
うーーーん!
どっちもいいから悩んじゃうな~!!
どっちもいいから悩んじゃうな~!!
Haruka
ふふ。曲の印象を決める部分だから、
ちゃんと納得して決めたいよね
ちゃんと納得して決めたいよね
長谷川
『……あはは、いっぱい悩んでくださいね!』
1週間後
宮益坂女子学園
宮益坂女子学園
Haruka
(もうすぐ、曲のデモが届く頃だな)
Haruka
(方向性が決まったら、本格的に振り付けを考えなくちゃ。
あとはライブの準備も進めていかないと……)
あとはライブの準備も進めていかないと……)
Haruka
(ふふ、やることがたくさんあるな。
大変だけど、少しずつ頑張ろう)
大変だけど、少しずつ頑張ろう)
Haruka
おはよう
Haruka
……あれ?