Feelings I Had Buried Deep Inside/Side Story 2

From Sekaipedia
冬弥
……ずいぶんと荒れた場所だな
ミク
……そうだね。
あっ! 冬弥、ストップ!
ミク
ふう……。
そこ、穴があいてるから気をつけて
冬弥
本当だ……。すまない、助かった
ミク
どういたしまして。
それにしても……
ミク
ここ、あの想いの欠片のセカイだと思うんだけど……
冬弥
いたるところがボロボロで、
なんとなく痛々しい
ミク
そうだね……
ミク
……ごめん。想いの欠片自体は
危険な物じゃないはずなんだけど……
ミク
床もなんだか脆そうだし、
この先には行かないほうがいいかもしれない
冬弥
そう、か……
冬弥
(だが……この先に、何かあるような気がする)
冬弥
(うまく言えないが、何か……。
見つけなければいけないものがあるような……)
冬弥
…………
冬弥
すまない、ミク。
やはり気になるから、少しだけ様子を見てくる
ミク
えっ、冬弥!?
冬弥
…………あ
ミク
あれは……ピアノと、バイオリン?
冬弥
ああ。そのようだ
冬弥
(埃はかぶってしまっているが、壊れている様子はないな。
調律すれば、まだ演奏もできそうだ)
ミク
…………
ミク
冬弥にとって、やっぱり大切なものなんだね。
ピアノもバイオリンも
冬弥
え?
ミク
だって今、安心してたでしょ?
ピアノやバイオリンは、
床とか壁とかと違って壊れてなかったから
冬弥
あ……
冬弥
……言われてみれば、そうかもしれない
ミク
言われてみれば、じゃダメでしょ。
もっと冬弥が自分で、自分の気持ちと向きあわないと
ミク
“すべき”だとか、“資格”だとかじゃなくて、
冬弥自身はどうしたいのかって、ちゃんと考えた?
冬弥
……そうだったな
冬弥
すまない。最近はみんなのおかげで
意識できるようになっていたつもりなんだが……
冬弥
クラシックのことになると、よくわからなくなる
冬弥
いや……どちらかというと、
意識しないように避けているのかもしれない
ミク
……避ける?
どうして?
冬弥
昔は、そのほうが楽だったからな……
冬弥の父
違う。もう一度
幼い冬弥
ごめんなさい……
冬弥の父
もう一度だ
幼い冬弥
でも、もう指が……
冬弥の父
ダメだ。もう一度。できるまでだ
幼い冬弥
……はい
冬弥
……父のピアノが好きだった
冬弥
作曲家が描きたかった感情や景色を、
膨大な知識と徹底された音楽理論で緻密に作り上げていった
あの音色が……
冬弥
俺もあんな風になれるだろうかと、
夢見た時もあった
冬弥
だから、そうなれるよう努力もしたかったし、
父や母の期待にも応えたかった
ミク
……でもそのために、つらい気持ちや
言いたい言葉を全部のみこんじゃったんだね
ミク
そっか……冬弥が、自分の気持ちに疎い理由が
ようやくわかった気がする
ミク
自覚してしまったら、もうそれ以上頑張れなくなるから……。
だから、意識しないようになっちゃったんだね
冬弥
……今思うと、そうだったのかもしれない
冬弥
結局、自分で自分を誤魔化しきれなくなって
クラシックから逃げてしまったんだがな
ミク
…………
ミク
私は、それを『逃げた』とは思わないけどね
ミク
冬弥は、家族の期待に応えられなかったっていう
負い目があるから、そういう言いかたをするんだろうけど……
ミク
そろそろ、自分を許してあげてもいいんじゃない?
冬弥
え……?
ミク
まあ、相棒が相当ストイックだから、
つい引っ張られるんだろうけど……
ミク
でも、もっと自分に対して
肯定的な捉えかたができるようになれたらいいね
冬弥
肯定的……?
ミク
たとえば……自分にはクラシックしかない、
って思うんじゃなくて——
ミク
自分には、クラシックがある、って思うとかね
冬弥
…………!
ミク
『クラシックのことが好きで、お父さんを尊敬してる』
っていう気持ちとは、もう向きあえてるんだしさ
ミク
きっと、そんなに難しいことじゃないと思うんだよね
冬弥
俺は……
ミク
——冬弥、もう1回聞くよ
ミク
冬弥にとって、
ピアノもバイオリンも大切な物なんじゃない?
冬弥
俺は……
冬弥
……ああ
冬弥
ピアノもバイオリンも、本当は……
冬弥
あ……
ミク
戻ってきたみたいだね。
冬弥、大丈夫?
冬弥
ああ。問題ない
冬弥
だが……
冬弥
あのピアノもバイオリンも、
ずっとあんな寂しそうな場所に
置かれたままなんだろうか
ミク
んー。あそこは想いの欠片のセカイだから、
想い次第、かな
ミク
冬弥は、あのピアノとバイオリンにどうなってほしいの?
冬弥
どう……?
冬弥
すまない、そこまでは考えていなかった
ミク
ふふ。じゃあまずは、それが
考えられるようにならないとね
冬弥
たしかに、そうだな
冬弥
——ありがとう、ミク。
おかげでいろいろ考えることができた
ミク
ううん。私も冬弥のことが
またちょっと知れてよかったよ
ミク
ねえ、練習の時間までまだあるし、
メイコのお店でちょっと休憩していかない?
冬弥
ああ、そうしよう
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