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Chapter 3: ? (edit)
淀んだ絶望の底で (Yozonda Zetsubou no Soko de)
淀んだ絶望の底で (Yozonda Zetsubou no Soko de)
Kanade's Room
Middle Schooler Kanade
(……マスタリングできた。
これで投稿ができる)
これで投稿ができる)
Middle Schooler Kanade
(投稿したら、早く次の曲を作らなきゃ。
たしか、昨日楽譜にメモしてたと思うけど……)
たしか、昨日楽譜にメモしてたと思うけど……)
Middle Schooler Kanade
…………はぁ、また電話か
Middle Schooler Kanade
(最近、放っておいてもずっと鳴ってるし……。
出るしかないか)
出るしかないか)
Middle Schooler Kanade
……もしもし
Kanade's Mother
『ああ、奏ちゃん!』
Kanade's Mother
『出てくれてよかったわ。ここのところ何度電話をかけても
つながらなかったから、何かあったかと……』
つながらなかったから、何かあったかと……』
Middle Schooler Kanade
……大丈夫、ちゃんとやってるよ。
それで、何かあったの?
それで、何かあったの?
Kanade's Mother
『奏ちゃんがひとりでちゃんと
暮らせてるか心配でねえ……』
暮らせてるか心配でねえ……』
Kanade's Mother
『本当はおばあちゃんが奏ちゃんと一緒に暮らせたら
よかったんだけど、また検査入院になって……。
ごめんねえ』
よかったんだけど、また検査入院になって……。
ごめんねえ』
Middle Schooler Kanade
(おばあちゃん、まだ調子わるいんだ……)
Middle Schooler Kanade
……ううん、気にしないで。
おばあちゃんはおばあちゃんの体のこと、大事にして
おばあちゃんはおばあちゃんの体のこと、大事にして
Middle Schooler Kanade
わたしのほうは大丈夫。
何も問題ないから
何も問題ないから
Kanade's Mother
『奏ちゃん……ごめんね』
Middle Schooler Kanade
……話はそれで終わり?
悪いけど、わたしやることがあるから——
悪いけど、わたしやることがあるから——
Kanade's Mother
『あ……それだけじゃないのよ』
Kanade's Mother
『おばあちゃんね、そっちの家に、
お手伝いさんをお願いしようと思うの』
お手伝いさんをお願いしようと思うの』
Middle Schooler Kanade
お手伝いさん?
Kanade's Mother
『そうなの。
春から通信制高校にかようって言ってたでしょう?』
春から通信制高校にかようって言ってたでしょう?』
Kanade's Mother
『通信制っていっても、勉強しながら家事をするのは
大変でしょうから、お手伝いさんに部屋のお掃除をしてもらったり
ご飯を作ってもらえるようにしたらいいんじゃないかって——』
大変でしょうから、お手伝いさんに部屋のお掃除をしてもらったり
ご飯を作ってもらえるようにしたらいいんじゃないかって——』
Middle Schooler Kanade
ううん、いらない
Kanade's Mother
『え?』
Middle Schooler Kanade
わたしは、ひとりでも生活していける
Middle Schooler Kanade
それにわたしは——曲を作らなくちゃいけないの
Kanade's Mother
『奏ちゃん……』
Middle Schooler Kanade
……何かあったら、こっちから連絡する
Middle Schooler Kanade
それじゃあ
Middle Schooler Kanade
……はぁ
Middle Schooler Kanade
晩ご飯は……ゼリーでいいか。
最近お腹もすかないし
最近お腹もすかないし
Middle Schooler Kanade
……早く、次の曲を作らないと
One month later
Miyamasuzaka Girls' Academy Middle School - Courtyard
Miyamasuzaka Girls' Academy Middle School - Courtyard
Classmate A
まふゆーっ! こっち向いて!
Middle Schooler Mafuyu
え……?
Middle Schooler Mafuyu
あっ! ……もう。
急に撮るから、びっくりしたよ
急に撮るから、びっくりしたよ
Classmate A
あははっ。だって、せっかくの卒業式じゃん。
記念に撮っときたかったの!
記念に撮っときたかったの!
Classmate B
あんたね……。記念にって言っても、
みんなこのまま高校に上がるでしょ
みんなこのまま高校に上がるでしょ
Classmate A
まーね。
外部から入ってくる子もそんなに多くないみたいだし、
なんだか代わり映えしなさそうだよね~
外部から入ってくる子もそんなに多くないみたいだし、
なんだか代わり映えしなさそうだよね~
Middle Schooler Mafuyu
ふふっ、そうだね
Middle Schooler Mafuyu
でも私は、またみんなと一緒にいられるから嬉しいな
Classmate A
ま……まふゆ~!!
まふゆはホントにいい子だね~! よしよし!
まふゆはホントにいい子だね~! よしよし!
Middle Schooler Mafuyu
もう、ふざけないでよね
Middle Schooler Mafuyu
ふたりとも、高校でもよろしくね
Classmate B
もちろん!
Classmate A
これからもよろしくね、まふゆ。
あっ、ねえ。今度は3人で写真撮ろうよ!
あっ、ねえ。今度は3人で写真撮ろうよ!
Miyamasuzaka
Classmate B
じゃあまたね、まふゆ!
新学期に会おうね
新学期に会おうね
Middle Schooler Mafuyu
うん。またね
Middle Schooler Mafuyu
…………
Middle Schooler Mafuyu
……代わり映えしない、か……
Asahina Family - Living Room
Middle Schooler Mafuyu
ただいま、お母さん
Mafuyu's Mother
おかえり、まふゆ
Mafuyu's Mother
今日はとってもいい卒業式だったわね。
まふゆの答辞も立派で、お母さん感動しちゃったわ
まふゆの答辞も立派で、お母さん感動しちゃったわ
Middle Schooler Mafuyu
そう? ……ふふ、よかった。
練習した甲斐があったな
練習した甲斐があったな
Mafuyu's Mother
そうだわ。
卒業のお祝いに好きな物を買ってあげる。
何がいいかしら?
卒業のお祝いに好きな物を買ってあげる。
何がいいかしら?
Middle Schooler Mafuyu
好きな……物……
Mafuyu's Mother
ええ。万年筆とか、本とか……。
まふゆが欲しい物を選んでいいのよ
まふゆが欲しい物を選んでいいのよ
Middle Schooler Mafuyu
本当? ありがとう!
んー、何にしようかな
んー、何にしようかな
Middle Schooler Mafuyu
…………ちょっと、考えてみるね
Mafuyu's Room
Middle Schooler Mafuyu
……欲しい物、か
Middle Schooler Mafuyu
そんな物、ひとつもないのに
Middle Schooler Mafuyu
(…………このまま、ずっと変わらないの?)
Middle Schooler Mafuyu
(何がおもしろいのか、何がほしいのか、
わからないままなの?)
わからないままなの?)
Middle Schooler Mafuyu
(高校生になっても、大学にいっても。
このまま、ずっと——)
このまま、ずっと——)
Middle Schooler Mafuyu
…………
Middle Schooler Mafuyu
……予備校の課題、全部終わっちゃった
Middle Schooler Mafuyu
次は、何しよう……
Middle Schooler Mafuyu
……? メッセージ?
Classmate A
『ねえねえ、これ聴いて!
すごくいい曲見つけちゃった!』
すごくいい曲見つけちゃった!』
Classmate B
『本当だ! 歌詞がじーんとくる……』
Middle Schooler Mafuyu
……曲?
Classmate A
『まふゆも聴いてみて!
絶対グッとくると思うから!』
絶対グッとくると思うから!』
Middle Schooler Mafuyu
グッと……
Middle Schooler Mafuyu
(……友達の勧めてくれる曲は、聴かなきゃな)
Middle Schooler Mafuyu
(…………耳触りのいい歌詞、明るいメロディー。
これがいい曲、なんだ)
これがいい曲、なんだ)
Middle Schooler Mafuyu
——本当だ。すごくいい曲だね、っと……
Middle Schooler Mafuyu
…………
Middle Schooler Mafuyu
——ん? おすすめ欄にある動画、なんだろう。
曲みたいだけど、なんだか雰囲気が違う……
曲みたいだけど、なんだか雰囲気が違う……
Middle Schooler Mafuyu
(きっと、聴いても何も感じないだろうけど……)
Middle Schooler Mafuyu
……っ!
Middle Schooler Mafuyu
(……なに? この感じ……)
Middle Schooler Mafuyu
(心臓を掴まれて、ゆさぶられてるみたい)
Middle Schooler Mafuyu
(この曲は一体——)
Middle Schooler Mafuyu
…………
Voice of Mafuyu's Mother
まふゆー。晩御飯できたわよ
Middle Schooler Mafuyu
あ……。
はーい。ありがとう、お母さん
はーい。ありがとう、お母さん
Middle Schooler Mafuyu
……もう、夜か。
そんなに長い時間、ずっと聴いていたんだ
そんなに長い時間、ずっと聴いていたんだ
Middle Schooler Mafuyu
(……聴けば聴くほど、呑みこまれそうになる)
Middle Schooler Mafuyu
(痛くて苦しい。
なのに、聴くのをやめられない)
なのに、聴くのをやめられない)
Middle Schooler Mafuyu
(何を見ても、何を聴いても、
何も感じられなかったのに、どうして……)
何も感じられなかったのに、どうして……)
Middle Schooler Mafuyu
(——そういえば、
この曲を作ったのは誰なんだろう)
この曲を作ったのは誰なんだろう)
Middle Schooler Mafuyu
(名前は——)
Middle Schooler Mafuyu
……K……