Chapter 8: ? (edit)
微かな光のほうへ (Kasuka na Hikari no Hou e)
微かな光のほうへ (Kasuka na Hikari no Hou e)
A few weeks later
Kanade's Room
Kanade's Room
Kanade &【Yuki】
『…………』
Kanade
『……うん、これで完成』
【Yuki】
『本当?
じゃあこれでアップできるんだね。嬉しいな』
じゃあこれでアップできるんだね。嬉しいな』
Kanade
『……ありがとう。雪』
Kanade
『わたしだけじゃ表現しきれてなかったものが、
雪のおかげで描けるようになったと思う』
雪のおかげで描けるようになったと思う』
【Yuki】
『……そっか。
それならよかった』
それならよかった』
【Yuki】
『——ねえK。聞いてもいい?』
Kanade
『え? うん、いいけど……何?』
【Yuki】
『その、Kだけじゃ表現しきれてなかったものって、何?』
Kanade
『……そうだな。
うまく言えないけど……』
うまく言えないけど……』
Kanade
『真っ白な絶望——かな』
【Yuki】
『真っ白な……?』
Kanade
『うん。前に雪は淀みが足りないって言ってたけど、
それに近いのかもしれない』
それに近いのかもしれない』
Kanade
『激しい絶望じゃなくて……降り積もる静かな絶望』
Kanade
『……そんな感じかな』
【Yuki】
『……そっか』
Kanade
『エンコードとアップロード作業は
わたしのほうでしておくよ』
わたしのほうでしておくよ』
Kanade
『今日も夜遅くまでありがとう。
お疲れ、雪』
お疲れ、雪』
【Yuki】
『うん、お疲れさま。
また新曲のラフができたら、教えてね』
また新曲のラフができたら、教えてね』
Mafuyu
…………
Mafuyu
(……Kと曲を作りあげて、わかった)
Mafuyu
(Kは強い意志で、光を灯そうとしてる。
どんな深い絶望の底にも)
どんな深い絶望の底にも)
Mafuyu
(……結局、自分が何を好きなのかも、
本当の自分がどんなものなのかも、まだよくわからないけど)
本当の自分がどんなものなのかも、まだよくわからないけど)
Mafuyu
(でも、いつか——)
Kanade
……うん。アップできた
Kanade
(雪のミックス……すごく良かったな)
Kanade
(音楽を始めたのは最近だって言ってたし、
アレンジの技術自体はまだまだだけど——)
アレンジの技術自体はまだまだだけど——)
Kanade
(曲のテーマを理解して、それを深めるセンスが
飛びぬけてる)
飛びぬけてる)
Kanade
(それに、“あの感覚”を、雪は理解してくれる)
Kanade
(絶望の底にただひとりいる時の、あの感覚を)
Kanade
(あの感覚をわかってくれる雪がいればいつか——)
Mafuyu
(Kの曲が私を——)
Kanade
(誰かを救う曲を——)
Kanade & Mafuyu
『作れるかもしれない』
『救ってくれるかもしれない』
『救ってくれるかもしれない』
Mizuki
『へえ~っ! 最初の頃のふたりって、
そんな感じだったんだね!』
そんな感じだったんだね!』
Ena
『昔ざっくり聞いてたけど、今聞くとかなり印象違うなぁ。
結構お互いのこと、いろいろ考えてたんだね』
結構お互いのこと、いろいろ考えてたんだね』
Kanade
『……あの頃から、ずいぶん時間が経ったな』
Mafuyu
『うん』
Mafuyu
『……あの時は、
まさか今みたいな関係になるとは思わなかった』
まさか今みたいな関係になるとは思わなかった』
Kanade
『そうだね。あのあと、Amiaとえななんが来て、
セカイに行ってミク達にも出会って——』
セカイに行ってミク達にも出会って——』
Kanade
『……大変なこともあったけど、
今みたいに話せるようになれて、よかったな』
今みたいに話せるようになれて、よかったな』
Mafuyu
『…………』
Miku
(……まふゆ、ちょっぴり優しい顔してる)
Miku
(まふゆも、奏と同じ気持ちなのかな)
Miku
『……ふたりの話、聞けてよかった』
Luka
『ふふっ、そうね。とても興味深い話だったわ』
Miku
『うん』
Luka
(……ミクがこんな表情するなんて)
Luka
(本当に、この子達が好きなのね)
Luka
『——絵名と瑞希は、ふたりが曲を作るようになって
しばらくしてから合流したのかしら?』
しばらくしてから合流したのかしら?』
Kanade
『うん。雪とボーカル入りの曲を作り始めてすぐに、
えななんが曲をイメージしたイラストを作ってくれて——』
えななんが曲をイメージしたイラストを作ってくれて——』
Ena
『あの時は本当にびっくりしちゃったな。
まさかKから直接連絡がくるなんて』
まさかKから直接連絡がくるなんて』
Mizuki
『ボクも、趣味で作ったMVを
Kに見つけてもらった時は驚いたよ』
Kに見つけてもらった時は驚いたよ』
Luka
『絵名と瑞希が入った頃は、
どんな雰囲気だったの?』
どんな雰囲気だったの?』
Kanade
『……ふたりが入った頃?』
Miku
『わたしも、聞きたい。
教えてくれる?』
教えてくれる?』
Mizuki
『えぇ~? ホントに聞きたい~?』
Mizuki
『昔のえななんは今よりもずーっとイライラしてたから、
聞いたらみんな、ひぇーってなっちゃうかもよー?』
聞いたらみんな、ひぇーってなっちゃうかもよー?』
Miku
『絵名……そんなにイライラしてたの?』
Ena
『あ、ちょっとAmia!
ミクが信じちゃってるでしょ!』
ミクが信じちゃってるでしょ!』
Mizuki
『信じるも何も、本当のことじゃーん?』
Luka
『それで?
実際のところはどうなの? 奏』
実際のところはどうなの? 奏』
Kanade
『ふふ。そうだね。
その話もしたいけど……』
その話もしたいけど……』
Kanade
『長くなると思うから、
また今度時間がある時に話そうか』
また今度時間がある時に話そうか』
Mafuyu
『そうだね。もう朝になるし』
Ena
『えっ!? うわ、もう6時じゃん!
やばっ、空がちょっと明るい……』
やばっ、空がちょっと明るい……』
Mizuki
『あ。さてはえななん、話聞いてばっかで
全然作業進めてなかったな?』
全然作業進めてなかったな?』
Ena
『うるさい!
そういうAmiaこそどうなの?』
そういうAmiaこそどうなの?』
Mizuki
『へっへーん。ボクはもう1時間前には
作業終わらせてあるもんねー!』
作業終わらせてあるもんねー!』
Mizuki
『あっ、K! MVの調整後のデータ、
共有フォルダに上げてあるから。
あとで時間がある時に、確認してもらえると嬉しいな!』
共有フォルダに上げてあるから。
あとで時間がある時に、確認してもらえると嬉しいな!』
Kanade
『わかった。ありがとう』
Ena
『う……ったく、要領いいんだから……』
Ena
『あーあ、こうなったらもういったん寝ちゃおうかな。
色塗り行き詰まってきたし……』
色塗り行き詰まってきたし……』
Mizuki
『じゃあ、ボクもそろそろ落ちようかな。
雪はどうする?』
雪はどうする?』
Mafuyu
『私はこのまま起きてる。
もうすぐお母さんが起きてくるから』
もうすぐお母さんが起きてくるから』
Mizuki
『……日中ちゃんと、どこかで仮眠取ってね、雪』
Mafuyu
『……そうする』
Kanade
『わたしは仮眠しようかな。
そのあと、作業に戻ろうと思う』
そのあと、作業に戻ろうと思う』
Luka
『なら、今日はこのあたりでお開きかしら。
私達も、セカイに戻るわね』
私達も、セカイに戻るわね』
Miku
『うん。今日は、楽しかった』
Mizuki
『ミクもルカもおやすみー』
Ena
『また明日ね』
Kanade
『それじゃあ、わたしも——』
Mafuyu
『……K』
Kanade
『ん? 何?』
Mafuyu
『…………』
Mafuyu
『……私は、あの時。
Kの誘いを受けて——』
Kの誘いを受けて——』
Mafuyu
『よかったと思う』
Kanade
『…………!』
Mafuyu
『それじゃあ』
Kanade
『あ……うん』
Kanade
……そっか
Kanade
(わたし達の背負っている絶望は……。
まだ消えたわけじゃない)
まだ消えたわけじゃない)
Kanade
(でも……)
Kanade
(——あの頃に比べたら、
わたし達はきっと、少しずつ前に進めている)
わたし達はきっと、少しずつ前に進めている)
Kanade
だから……
Kanade
これからも、わたしは作り続けていこう
Kanade
いつか……まふゆを。
みんなを救う曲を、作るために
みんなを救う曲を、作るために