Guiding a Lost Child to What Lies Beyond/Story/Chapter 2

From Sekaipedia
まふゆ
Then, mom, I'm going to school!
——それじゃあ、お母さん。
学校、行ってくるね
まふゆの母親
Be safe! Remember, you don't have prep school today. Will you return early?
いってらっしゃい。
たしか今日は予備校はなかったわよね。
帰りは早いの?
まふゆ
Yes, I don't have prep school, but I'm going to do some studying in the classroom, so I think I'll be home at the same time as usual.
予備校はないけど、教室で自習してくるつもり。
だから帰りはいつもと同じ時間になるかな
まふゆの母親
Fufu, you really are motivated, aren't you?
ふふ、今日もやる気十分ね
まふゆの母親
But...... Don't get so caught up in your studies that you're late for curfew, okay?
でも……勉強に夢中になりすぎて、
門限に遅れないようにするのよ?
まふゆ
Thank you mom! Then, I'm going now.
ありがとう、お母さん。
じゃあ、行ってきます!
まふゆの母親
(……本当、まふゆはいい子ね)
まふゆの母親
——そうだわ、まふゆの部屋を掃除しておこうかしら
まふゆの母親
綺麗にしておけば、あの子も
気持ちよく勉強できるでしょうし……
まふゆ
えっと、数学の参考書は……
クラスメイト
あれ? まふゆ、帰らないの?
今日は部活も休みじゃなかったっけ?
まふゆ
そうだけど、自習して帰ろうと思ってるの。
模試も近いから、勉強したくて
クラスメイト
まふゆってば、やっぱり真面目だね。
たまにはちゃんと息抜きしなきゃだめだよー?
クラスメイト
まぁ、まふゆはちゃんとしてるし、
きっと大丈夫なんだろうけどさ
まふゆ
ふふっ、心配してくれてありがとう
クラスメイト
あ、そろそろ部活行かなきゃ。
ばいばい、まふゆ!
まふゆ
うん。また明日
まふゆ
…………勉強しよう
まふゆ
——もう、こんな時間か
まふゆ
(……模試対策用の問題集は終わった。
3周解き終わったし、もう大丈夫かな)
まふゆ
(ちゃんとやれば、結果は出せるはず——)
まふゆ
……そろそろ帰らないと。
お母さんが待ってる
まふゆ
ただいま
まふゆ
……あれ?
まふゆ
(……いつもなら、お母さんが出迎えてくれるのに)
まふゆ
お母さん、どうしたの?
何かあった?
まふゆの母親
……ねえ、まふゆ。
お母さんに、何か隠してることない?
まふゆ
え……? ううん、ないよ。
私がお母さんに隠しごとなんて——
まふゆの母親
——本当に?
まふゆの母親
お母さんの目を見て、
何もないって、ちゃんと言える?
まふゆ
え……
まふゆ
(隠しごと……。
お母さんに、言えないようなことって……)
まふゆ
(——もしかして……)
まふゆ
……隠してることなんてないよ。
お母さんに、そんなことするわけないし
まふゆの母親
じゃあ、“これ”は、なに?
まふゆ
……!
まふゆ
(……私の、シンセサイザー……)
まふゆの母親
さっきまふゆの部屋を掃除してたら見つけたの。
使わないのに部屋にあっても邪魔でしょう?
まふゆの母親
お父さんが買って、それっきりになってたのかしらね。
明日、回収してもらうから……
まふゆ
…………なんで?
まふゆの母親
え? だって、いらないでしょう?
まふゆ
これは……私にとって……
まふゆの母親
ああ、業者さん。
粗大ゴミは玄関前にまとめて置いてますので、
よろしくお願いしますね
まふゆの母親
まふゆもわざわざ見てなくても大丈夫よ。
そろそろ塾に行く時間でしょう?
まふゆ
……うん、わかった
まふゆの母親
それじゃ、お母さんはお隣さんに回覧板を回してくるわね
まふゆ
…………
回収業者
——ふう、あとはこのシンセサイザーで最後かな
まふゆ
あ……
回収業者
ん? どうしました?
まふゆ
——ごめんなさい、
間違ってゴミに出しちゃったみたいで……。
このシンセサイザーはまだ使うので、回収しなくても大丈夫です
まふゆ
母には私から伝えておきますから
回収業者
ああ、わかりました。
じゃあ他のものを回収しておきますね
まふゆ
はい、お願いします
まふゆの母親
これは前に捨てたはずよ。
どうしてまふゆの部屋にあるのかしら
まふゆ
…………え、っと
まふゆ
その——
将来のために、勉強しておこうかなって
まふゆの母親
……どういうこと?
まふゆ
音楽をやってる友達がいるんだけど、
その子を見てたら興味が出てきて、
私も勉強をしてみたいなって思ったの
まふゆ
ほら、世の中には音楽療法とかもあるし。
将来に役立つかもしれないなって……
まふゆの母親
……そうだったの
まふゆの母親
——さすがまふゆね。
新しいことも、意欲的に勉強できて偉いわ
まふゆ
……!
まふゆ
ありがとう、お母さん。
だから、このシンセは——
まふゆの母親
——でもね
まふゆの母親
それって、本当に今、必要なことかしら?
まふゆ
え……?
まふゆの母親
音楽はたしかに素敵なものよ。
まふゆが言ったとおり、音楽療法もあるわけだし、
お医者さんになったら役に立つかもしれない
まふゆの母親
だけどお母さん、心配なの
まふゆ
心配……?
まふゆの母親
もしまふゆが、その楽器のせいで勉強が疎かになったら
受験で失敗するかもしれないでしょう?
まふゆの母親
もちろん、まふゆは賢いし、とってもいい子だから
そんなことはないってわかってるけど……
まふゆの母親
もしそれでまふゆの将来が狭まったらと思うと、
お母さん、とても心配なのよ
まふゆ
お母さん……
まふゆの母親
音楽療法の勉強は、大学に行ってからでも遅くないと思うし——
それに、息抜きの方法だったら
他にもいろいろあるんじゃないかしら
まふゆの母親
そうだわ。昨日の夜やっていたように、映画を見るのはどう?
字幕をつけずに見たらリスニングの勉強になるって
言ってたじゃない?
まふゆの母親
今度、お母さんが知り合いの先生に頼んで、
勉強に向いてる映画を教えてもらいましょう
まふゆ
……ありがとう、お母さん。
心配かけちゃってごめんなさい
まふゆ
……でも——
まふゆ
(……私にとって、音楽は……)
中学生のまふゆ
(…………このまま、ずっと変わらないの?)
中学生のまふゆ
(何がおもしろいのか、何がほしいのか、
わからないままなの?)
中学生のまふゆ
(高校生になっても、大学にいっても。
このまま、ずっと——)
まふゆ
(……やっぱり知りたい)
まふゆ
(この曲の何が——私を揺り動かすのか)
まふゆ
……メロディーから真似して、作ってみよう
まふゆ
…………お母さんが、
私のことを心配してくれるのはすごく嬉しいけど
まふゆ
私は……やってみたいの。音楽を
まふゆの母親
まふゆ……
まふゆ
もちろん、受験勉強に問題ない範囲でやるよ?
教えてくれる友達にも、迷惑かけないように……
まふゆの母親
……そのお友達は、同い年の子なの?
まふゆ
えっ? うん、同い年だけど……
まふゆの母親
…………そう
まふゆの母親
すごいわね。芸術は心を豊かにしてくれるものだし、
まふゆが興味を持つのもわかるわ
まふゆ
! それじゃあ……
まふゆの母親
でも……その子は、ちゃんと受験勉強を
しているのかしら?
まふゆ
え……?
まふゆの母親
まふゆと同じくらい高い目標をもって
受験勉強を頑張ってる子なら、
息抜きの趣味として、お母さんも応援できるんだけど……
まふゆ
勉強、は……
まふゆの母親
…………そうなのね
まふゆの母親
——ねえ、まふゆ。いろいろな子とつきあうのは大事だと思うわ。
感性も磨かれるし、将来のために人脈を作るのもいいことよ
まふゆの母親
でも……まふゆが今、大事にしなきゃいけないのは
同じように受験勉強を頑張っているお友達じゃないかしら?
まふゆの母親
きっと、同じ目標を持ってる子のほうが
実りのあるおつきあいができると思うの
まふゆ
そう、かもしれないけど……
まふゆ
私は——
まふゆの母親
まふゆ……
まふゆの母親
今日は一体どうしたの?
お母さん、まふゆに何かしてしまったかしら……
まふゆの母親
お母さんはただ、まふゆの将来のためにと
思っているだけなのに……
まふゆ
あ——
まふゆ
……ご、ごめんなさい。
私、そんなつもりじゃなくて……!
まふゆ
お母さんは、私のことをいつでも真剣に考えていてくれるのに——
困らせちゃってごめんね
まふゆの母親
——ううん、いいのよ。
お母さんも、まふゆが本当にやりたいことなら応援するつもりよ
まふゆの母親
心配だから、つい口うるさくなっちゃったけれど、
これはまふゆの人生だもの
まふゆの母親
だから——まふゆがしたいようにしていいわ
まふゆ
え……?
まふゆの母親
まふゆが、本当にやりたいことをしなさい。
でも——
まふゆの母親
……後悔、しないようにね?
まふゆ
…………っ
まふゆ
……私……私が、したいことは……
まふゆ
——ごめんね、お母さん
まふゆ
…………私、音楽は、もうやめるよ
まふゆ
それで、将来のために受験勉強する。
だから安心して、お母さん
まふゆの母親
……本当に、それでいいのね?
まふゆ
うん、今は勉強が一番だもん
まふゆの母親
そう……。
お母さん、安心したわ
まふゆの母親
じゃあ、このシンセはもういらないわね。
お母さんが預かっておくわ
まふゆ
うん、わかった。
わがまま言ってごめんなさい
まふゆ
——私、夕飯まで勉強してくるね
まふゆ
……はあ、はぁ……っ
まふゆ
(……胸の奥が、冷たい。
苦しくて、何も考えられない……)
まふゆ
(さっきのお母さんの姿が——頭から、離れない)
まふゆの母親
……後悔、しないようにね?
まふゆ
……通、知……?
瑞希から……
瑞希
『今からセカイに来れる?
みんなに話したいことがあるんだ!』
まふゆ
……セカイ……
まふゆ
…………セカイに、行こう

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