Guiding a Lost Child to What Lies Beyond/Story/Chapter 7

From Sekaipedia
レン
『どうしよう。ま、迷子ってこと……?』
ミク
『落ち着いて、レン。
えっと……。どうしよう……』
まふゆ
……奏達に連絡する。スマホ、使うね
まふゆ
…………。
連絡とれた。動かないで待ってて、だって
ミク
『……よかった。
もう大丈夫だね、レン』
レン
『うん……!』
まふゆ
……奏達がわかりやすい場所で、座って待ってようか
レン
『……』
レン
『……ひとりになるの、怖くないの?』
まふゆ
別に……
レン
『そ、そうなんだ……。
すごいね……。ぼくは、ちょっと怖いな……』
まふゆ
……どうして、レンが怖がるの。
今ひとりなわけでもないのに
レン
『そうだけど、えっと……』
レン
『……セカイに来た時のことを、思い出しちゃうんだ』
まふゆ
セカイに?
レン
『……うん。すごく広くて、なんにもなかったから……。
ミクが見つけてくれるまで迷子になっちゃってたんだ』
レン
『その時のことを思い出すと、怖くなっちゃって……』
まふゆ
…………
まふゆ
……そういえば、昔——
幼いまふゆ
わあ……!
まふゆの母親
——まふゆ。遊園地は人が多いからね、
お母さんからはぐれないようにしなきゃだめよ
幼いまふゆ
うん!
おかあさん、連れてきてくれてありがとう!
幼いまふゆ
(きらきらしてるのがたくさんある……!
それに、みんなニコニコしてて楽しそう)
まふゆの母親
あ、見てまふゆ。
あのお店のチュロス、美味しいって評判らしいの。
食べてみましょうか
幼いまふゆ
うん!
まふゆの母親
結構人が並んでるわね……。
ちょっと待つことになるけど大丈夫?
幼いまふゆ
大丈夫だよ!
遊園地きらきらしてるから、見てるだけで楽しいもん!
まふゆの母親
ふふ。まふゆはいい子ね。
でも、お母さんのそばから離れないようにね?
幼いまふゆ
はーい!
幼いまふゆ
(チュロス買ったら、何に乗ろうかなぁ……!
メリーゴーランドもかわいいし、おさかなコースターもいいな)
幼いまふゆ
(そういえば、たまにフェニーくんが
遊園地の中をお散歩してるんだっけ)
幼いまふゆ
(いないかなぁ……)
幼いまふゆ
…………あっ!
幼いまふゆ
(フェニーくんいた! 握手してもらいたいなぁ……!)
まふゆの母親
はい、まふゆ。チュロスよ。
プレーンでいいわよね
幼いまふゆ
あ、うん!
ねえおかあさん、あっちにフェニーくんが……
まふゆの母親
ちょっと待ってね。
お父さんから電話だわ、何かしら
幼いまふゆ
う、うん……
幼いまふゆ
(……あ、フェニーくん、行っちゃう。
今行かないと、握手できないかも)
幼いまふゆ
(でも、おかあさんと一緒じゃないと……)
幼いまふゆ
あのね、おかあさん……
まふゆの母親
まふゆ、もうちょっとだけ待ってくれる?
まふゆの母親
あら、お仕事早く終わりそうなの?
じゃあお夕飯、早く作らなきゃいけないわね
幼いまふゆ
…………
幼いまふゆ
(おかあさん、まだ電話終わらなそう)
幼いまふゆ
(…………本当は、だめだけど)
幼いまふゆ
(フェニーくん、すぐ近くにいるし
ちょっとだけなら……)
幼いまふゆ
……えへへ
幼いまふゆ
(フェニーくんと握手できてよかった……。
早くおかあさんのところに戻らないと!)
幼いまふゆ
——あれ?
幼いまふゆ
おかあさん、ここにいたはずなのに……
なんで?
幼いまふゆ
(どこにもいない……あれ……?)
幼いまふゆ
…………おかあさん?
幼いまふゆ
……ど、どうしよう……。
迷子に、なっちゃった……おかあさん、探さないと……
通行人の女性
——ねえ、どうしたの?
もしかして、パパやママとはぐれちゃった?
幼いまふゆ
っ……!
通行人の女性
迷子みたいね……。
お名前言えるかな?
幼いまふゆ
えっと、朝比奈——
幼いまふゆ
(あ……でも、知らない人に名前を言っちゃダメだって
おかあさんが……)
幼いまふゆ
その……うう……
幼いまふゆ
ご、ごめんなさい……っ!
通行人の女性
あ、ちょっと……!
幼いまふゆ
(知らない人に、声かけられた……。
周りの人も、ずっとこっち見てる……)
幼いまふゆ
(メリーゴーランドも、あんなに大きかったっけ……?
お馬さん、かわいいと思ってたのに……)
幼いまふゆ
(なんでだろう、こわい……)
幼いまふゆ
(——遊園地、全然きらきらしてないよ……。
なんで……?)
幼いまふゆ
(……こわい。こわいよ。
おかあさん、どこ……?)
幼いまふゆ
おかあさん……、おかあさん……っ!
まふゆの母親
——まふゆ!!
よかった、探したのよ……!
幼いまふゆ
あ……。
おかあ、さん……!
幼いまふゆ
おかあさん……
まふゆの母親
もう、心配したのよ。
見つかって安心したわ……
まふゆの母親
まふゆ、大丈夫だった?
どこもケガしてない?
幼いまふゆ
うん……っ
まふゆの母親
そう、よかった……
幼いまふゆ
おかあさん、ごめんね……?
まふゆの母親
ううん、いいのよ。
まふゆが無事でいてくれたことが一番だもの
幼いまふゆ
おかあさん……
まふゆの母親
ねえ、まふゆ。
ひとつだけ聞いてもいい?
幼いまふゆ
うん、なあに?
まふゆの母親
どうして、お母さんの言うことを聞かなかったの?
幼いまふゆ
え……
まふゆの母親
お母さんのそばから離れちゃだめよって、言ったわよね。
それなのに、どうしていなくなっちゃったの?
幼いまふゆ
あ……。
え、えっと……
まふゆの母親
お母さんね、まふゆがいなくなって、
すごく怖かったのよ
まふゆの母親
まふゆが、お母さんを心配させるような
“悪い子”になっちゃったと思って——
幼いまふゆ
……!
幼いまふゆ
悪い、子……
まふゆの母親
ええ、もしまふゆがいなくなってしまったらって思ったら、
お母さん、とても悲しい気持ちになって……
まふゆの母親
胸がぎゅっとして……とっても、怖かった……
まふゆの母親
本当に……っ
幼いまふゆ
あ……
幼いまふゆ
ご、ごめんなさい。おかあさん……!
泣かないで、わたし、わたし……
幼いまふゆ
……おかあさんが泣くの、やだ……っ
まふゆの母親
……まふゆは、優しい子ね……
まふゆの母親
まふゆが、お母さんの言うことをちゃんと聞く“いい子”だったら
お母さんも悲しくないのに……
幼いまふゆ
おかあさん……
幼いまふゆ
ごめんなさい……っ。
いい子に、する……!
ちゃんとおかあさんの言うこと、聞くから……!
まふゆの母親
まふゆ……
まふゆの母親
——ふふ、大丈夫よ。
まふゆがいい子になってくれたから、
お母さんも悲しくなくなったわ
まふゆの母親
さあ、今日はもう帰りましょうか。
お父さんがいつ帰ってきてもいいように
お夕飯の準備をしなきゃ
幼いまふゆ
うん……っ、あ……!
幼いまふゆ
お、おかあさん……。
手、痛いよ……引っ張らないで……
幼いまふゆ
——おかあさん……っ
まふゆ
——あの時、お母さんの手が、すごく冷たかった
まふゆ
ううん、あの時だけじゃない。
今もずっと……冷たい気がする
まふゆ
(でも、どうして……?)
レン
『まふゆちゃん……』
迷子の女の子
うっ、ううっ、ぐすん……。
お母さん、どこぉ……
ミク
『あ……迷子……』
レン
『た、大変……助けてあげないと……!』
まふゆ
そうだね。あ、でも……
女の子の母
——あっ、いた!
よかった……どこも怪我してない?
迷子の女の子
お母さん……っ!
うんっ、大丈夫だよ!
女の子の母
怖かったね、もう大丈夫よ。
はぐれないように手をつなごうか
迷子の女の子
うん!
まふゆ
…………。
大丈夫みたい
レン
『よかったぁ……』
ミク
『レン、嬉しそう』
レン
『……あの子が、あったかそうでよかったなって』
まふゆ
……あったかい?
レン
『う、うん。ひとりだと寂しいし、
なんだか心が冷たい感じがするから……』
まふゆ
……レンも、冷たいって感じるの?
レン
『……ぼくは……』
レン
『……ぼくも、そうだったから。
ひとりでセカイに来た時、誰もいなくて……』
レン
『みんなを探そうって歩いてたけど、誰も見つからなくて……』
レン
『すごく……心細かった』
ミク
『……レン』
レン
『——でも、ミクがぼくを見つけてくれて、
手を握ってくれた時、あったかいって思ったんだ』
まふゆ
……どうして?
レン
『……“ひとりじゃないよ”って、言ってくれた気がしたから』
レン
『だから、あの女の子も、
同じなのかなって……』
まふゆ
ひとりじゃ、ない……
……ずっと、そばにいるよ
まふゆ
(私は——、
そのあたたかさを、知っているような——)
???
——まふゆ!
まふゆ
……っ!

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