Ena's Room
Ena
『K、どこ行ってたの?』
Kanade
『セカイに』
Ena
『え? セカイって……あそこに行ってたの!?』
Kanade
『そう。 ……それで、決めた』
Kanade
『わたしは雪のために曲を作る。 雪を……救いたいの』
Ena and Mizuki
"Huh...?"
『え……?』
Mizuki
『……そっか。 ミクと話したんだね』
Mizuki
『本当は消えたいなんて思ってない……か』
Ena
『…………』
Mizuki
『ねえ、K。 ボクも一緒に連れてってよ』
Kanade
『え?』
Mizuki
『もちろん、ボクが行ってもなんにもなんないし、 雪のことは、雪にしかわかんないけど』
Mizuki
『でも、ボクの感じた気持ちを伝えたって いいと思うんだよね』
Mizuki
『……雪がいなくなったら、寂しいって気持ちはさ』
Kanade
『Amia……』
Kanade
『わかった。 セカイに行く時は、連絡する』
Mizuki
『ありがとう、K』
Ena
『………………』
Mizuki
『……えななんは、一緒に行かない?』
Ena
『行かない』
Ena
『KもAmiaも、雪のこと構い過ぎじゃない?』
Ena
『しんどいのなんて、みんな一緒でしょ。 雪だけ特別なわけじゃない』
Ena
『……あのセカイとかいう変な場所にいるってところだけは、 ちょっと違うかもしれないけど』
Ena
『でも、だからって雪のためにあんなところに 行きたいなんて、私は思わない』
Ena
『……だから、行かない』
Mizuki
『……そっか』
Mizuki
『わかった。なら、ボク達だけで行こうか。K』
Kanade
『うん』
Kanade
『話を聞いてくれてありがとう、えななん』
Ena
『………………』
Kanade's Room
Kanade
(急いで作らないと……。雪が、消えてしまう前に)
Kanade
メインはストリングス……? ううん、もっと、厚い音がいいはず……
Kanade
早く、雪に届く曲を……
Kanade
(……でも。 もしかして、わたしはまた、 同じ間違いを繰り返そうとしているのかもしれない)
Kanade
(お父さんのために作った曲は、 お父さんを追い詰めた)
Kanade
(雪のために作っているこの曲も…… もしかしたら、雪を余計に追い詰めるかもしれない)
Kanade
(……わたしの曲が、また、誰かを不幸に……)
Kanade
(……ううん)
Kanade
(ミクが教えてくれた)
ミク
あの子を見つけてあげられるとしたら、きっと奏の曲しかない
Kanade
(……わたしの曲は、エゴでできてる。 『自分の曲で誰かを幸せにしたい』っていう、わたしのエゴで)
Kanade
(そんな曲に、誰かを救う力なんて、本当はないのかもしれない)
Kanade
(それでもわたしは……ミクの言葉を信じたい)
Kanade
(雪を、わたしの曲で——今度こそ救いたい)
Kanade
……できた……
Kanade
……Amiaに連絡しなくちゃ
Mizuki
『K! 曲できたってほんと!?』
Kanade
『うん』
Mizuki
『すごいスピードで作ったんだね。 それで、どんな曲ができたの?』
Kanade
『今、送る』
Mizuki
『…………』
Mizuki
『……そっか、こういう曲になったんだね』
Mizuki
『K。きっと届くよ、この曲』
Kanade
『ありがとう。それじゃあ……』
Mizuki
『えななん? 起きてたの?』
Ena
『……作業してたから』
Ena
『K、曲できたの?』
Kanade
『うん。えななんも、聴いてくれる?』
Ena
『……いいけど』
Ena
『………………』
Ena
『……やっぱりKの曲は、あったかいね』
Kanade
『ありがとう』
Ena
『……行ってらっしゃい』
Ena
『ちゃんと、戻ってきてね』
Mizuki
『もっちろん! それじゃあ、行こうK!』
Kanade
『うん。 ——会いに行こう、雪に』