Revival my dream/Story/Chapter 4

From Sekaipedia
幼い類
ショー?
類の母
そう! 寧々ちゃんのお母さんが、
チケットをもらったから一緒に見に行かないかって
類の母
類、そういうの見たことないでしょう?
幼い類
うん。
でも、お芝居ってどんな?
幼い類
テレビでやってるドラマみたいなのなら、
僕はそんなに……
類の母
なんでも見てみて損はないんじゃない?
動物や虫だって、写真で見るのと実際に見るのとじゃ、
全然違うでしょ?
幼い類
それはそうだけど……
類の母
あ! 電話がかかってきちゃった。
とにかく今度、見に行こうね
幼い類
もう、お母さんってば……
幼い類
ショーか……。
面白いのかな?
幼い寧々
わぁ……!
おっきい……!
幼い類
うん、すごい会場だね。
この規模だと、どれくらい人が入るのかな
幼い寧々
わ、わかんない……
幼い類・寧々
『…………』
幼い類
(……やっぱりうまく話せないな)
幼い類
(でも、気にし過ぎちゃダメだよね)
幼い類
——今日やるのは『人魚姫』のショーなんだ
幼い類
(話は知ってるし、
あんまり期待できないな)
幼い類
あ。雨の音……
幼い類
(人魚姫が、嵐の中で王子を助けるシーンから始まるのかな)
幼い寧々
わぁ!
いっぱい人が出てきたよ!
幼い類
……!?
幼い類
(なんだ? このダンス——)
幼い類
(ただ踊ってるだけなのに、嵐に見える……)
幼い類
(まるで、高い波が次から次に
やってくるみたいに見えて……!)
船員
『駄目です! 舵がいうことをききません!』
王子
『どうにか持ちこたえてくれ!
このままでは転覆してしまう!』
王子
『うわあっ!!』
幼い類
……っ!
幼い寧々
ぴゃっ!
船員
『お、王子が海に!
誰か! 誰か王子を助けてくれー!』
幼い類
(びっくりした……。
なんだか本当に嵐の中にいるみたいだった……)
幼い類
(——魔法みたいだな)
幼い類
(ここじゃ、ダンスが嵐になるし、
照明が本物の雷になる)
幼い類
(絶対にこれが正解、
なんてものがなくて……)
幼い類
(とっても——自由なんだ)
幼い寧々
ほあ……
類の母
類、お母さん達はお手洗いに行ってくるから、
寧々ちゃんとここで待っててね
幼い類
うん。いってらっしゃい
幼い類
(——今日のショー、すっごく面白かったな)
幼い類
(……でも、最後の人魚姫が泡になるシーンは、
もっともっとドラマチックにしていいんじゃないかな?)
幼い類
(そうだ! シャボン玉を使うのはどうだろう。
舞台の真ん中にシャボン玉が出るマシンを置いて、
人魚姫が泡につつまれていくみたいにしたら——)
幼い類
(うん! 面白そう!
でもシャボン玉だけじゃちょっとつまらないから、
照明の光を段々細くしていって、消えていく感じを……)
幼い寧々
あ……あの……
幼い類
ん? どうしたの、寧々ちゃん
幼い寧々
お、おもしろかったね……!
幼い類
……え?
幼い寧々
に、人魚姫が歌うところ、
すっごく、ジーンとした……!
幼い類
……うん! 綺麗だったね!
幼い類
人魚姫が歌いだすと少しずつ空が晴れていったところも、
すごく素敵だったよね!
幼い寧々
うん! 人魚姫、すごかった!
幼い類
僕は、声をとられちゃうシーンも好きだな。
寧々ちゃんは他に気に入ったところ、ある?
幼い寧々
……!
わたしは、声をとられちゃうところは怖かったけど——
幼い寧々
るーいー!
準備できたよー!
幼い類
うん。じゃあ僕が手を叩いたらスタートだよ!
——はい!
幼い寧々
『わたしは、りくへ行くわ! あの人に会いに——!』
幼い寧々
『♪ ————!』
幼い類
うん! すごくいいね!
じゃあ次は魔女の洞窟へと泳ぎ出すシーンだよ!
幼い寧々
わかった! えーい!
幼い寧々
『まってて王子さま!
わたし、人間になって会いに行くわ!』
幼い類
いいねいいね!
その調子だよ寧々!
寧々の母
ちょ……ちょっとふたりとも何をやってるの!?
ビショビショじゃない!
類の母
ビニールプールなんてひっぱりだして何するのかと思ったら……。
こら、類! 寧々ちゃんに危ないことさせないの!
幼い類
でも……王子を必死に求める人魚姫の演技のためには、
本当に泳いでみるのが一番いいと思ったんだ!
類の母
だからって……
幼い寧々
いいのおばさん!
わたし、やりたいの!
幼い寧々
わたし人魚姫だから、泳いで王子さまに会いに行かなきゃ!
幼い類
寧々……
寧々の母
……ふふ。
寧々がこんなに大きな声を出すなんて
寧々の母
仕方ないわね。でもふたりとも、
ちゃんと濡れてもいい服を着てから遊びなさいね?
幼い類・寧々
『はーい!』
幼い類・寧々
『……あはは!』
幼い類
——はぁ。この劇団のショー、すっごく面白いな!
海外の演劇作品も見てみてよかった
幼い類
もう1回、映像再生してみよう!
幼い類
……あれ?
これ、最後に演出家のインタビューもついてるんだ
幼い類
見てみようかな
インタビュアー
『それでは次に——演出をするうえで
心がけていることを教えてもらえますか?』
演出家
『僕はできるだけ、形式に囚われないで、
常に新しいチャレンジをするようにしているけれど……』
演出家
『その中でもひとつ、必ず心がけていることがある』
演出家
『それは——垣根を超えるということだ』
幼い類
垣根……?
演出家
『富める人、貧しい人、賢い人、愚かな人、
マジョリティ、マイノリティ——すべて関係ない』
演出家
『すべての人が、
共に笑い、泣き、怒り——』
演出家
『そうして見終わった瞬間には、
同じ感情でつながれる』
演出家
『そんなショーを作り続けていきたいと思っているんだ』
演出家
『すべての人がつながった先にはきっと——、
僕達のまだ見たことのない、素晴らしい世界が
広がっているだろうからね!』
幼い類
…………
幼い類
垣根を超えて、つながれる……
???
類くんは、ぼく達と違うから
幼い寧々
お、おもしろかったね……!
幼い類
(……僕も)
幼い類
(僕も、そんなショーを作ってみたいな)
幼い類
——あ、そういえば
幼い類
寧々が置き忘れていった絵本に、
そんなお話があったような……
幼い類
あった!
『森のひとと町のひと』
幼い類
……そうだ。
このお話をアレンジして、ショーにしたらどうかな?
幼い類
そうしたら、僕もみんなともっと——
幼い類
よし! 考えてみよう!

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