< BREAK DOWN THE WALL | Story
Street Sekai - Alleyway
ストリートのセカイ - 路地
ストリートのセカイ - 路地
KAITO
おお~、結構綺麗な道だね!
Toya
そうですね。 ここは少し、ハンブルクの通りに似ている気がします
KAITO
そこも、お父さんのコンサートで行ったの?
Toya
はい。何度か。 ここはその時歩いた道より、もう少し下町寄りの道のようですが
KAITO
へえ、そうなんだ! ……お!
KAITO
この辺りはフライヤーがいっぱい貼ってあるね! カラフルで楽しいな~
Toya
本当ですね。 デザインもおもしろくて……ん?
Toya
……! これは……!
KAITO
どうしたの?
Toya
Gurney flapのフライヤーが……
KAITO
が、がーにー……?
Toya
あ……遠野さんと、颯真さんのチームの名前です
KAITO
え! そうなんだ!
Toya
でも、なぜふたりのチームのフライヤーが、 このセカイに……
Toya
(……よく見ると、 このフライヤーにはチーム名しか書いてない)
Toya
(イベントの日付も、 他の共演者の名前もない。 それに少し、剥がれかけている)
Toya
(もしかすると、これは……)
KAITO
どうかしたの? 冬弥くん
Toya
……『遠野さんはもう戻ってこないのではないか』
Toya
『颯真さんも遠野さんのための曲作りを 諦めてしまうのではないか』
Toya
……そういう想いが これを生んだのかもしれません
KAITO
あ……
KAITO
……たしかに、そういう不安な気持ちが 反映されることもあるかもしれないね……
Toya
はい……
Toya
(遠野さんが去って、 颯真さんの病室を訪れた時——)
Toya
(たしかに俺は、思った)
Toya
(颯真さんの作った曲で歌う遠野さんは、 もう、見られないのかもしれないと)
Toya
(だが同時に——)
Toya
……俺は、信じています
Toya
遠野さんのことも、颯真さんのことも
KAITO
冬弥くん……
Toya
…………以前、カイトさんは、 颯真さんと遠野さんは、俺達に似ていると言っていましたね
Toya
『相棒のことが大好きで、 RAD WEEKENDを超えたいと思ってるところが似てる』と
KAITO
ああ、そういえばそんな話をしたね
Toya
あの日、遠野さんは——
大河
なあ新。お前は、お前のために歌ってんじゃねえか?
大河
お前は相棒の夢を背負ってるわけじゃねえ。 颯真を失った、その痛みに耐えきれねえから、 颯真の夢にすがって歌ってる
大河
……違うか?
新
…………!
Toya
大河さんにああ言われて……ここを去ってしまった
Toya
ですが、俺は思ったんです
Toya
遠野さんが歌っている理由は、 痛みに耐えきれないから、かもしれない
Toya
でも、きっと……それだけじゃない。 それだけのはずがない
Toya
遠野さんはきっと 颯真さんからもらった夢を、何より大切に思っています
Toya
……俺が、彰人から夢をもらって それを俺自身の大切な夢としたように
Toya
それは、ふたりの話す様子を見ているだけで ……痛いほど伝わってきました
KAITO
冬弥くん……
Toya
だから俺は、謙さんに告げられた俺の課題を完遂して、 遠野さん達にそのことを伝えたいと思います
Toya
——遠野さん達に、また戻ってきてもらうためにも
KAITO
そっか……
KAITO
うん、いいね! メラメラって感じでさ!
KAITO
それに、このセカイにわざわざ生まれたフライヤーなんだ
KAITO
不安な想いで生まれたんじゃなくて、 『遠野さん達と一緒にRAD WEEKENDを超えたい』 っていう想いから生まれたんだって、ボクは思うよ
Toya
……そうですね。 ありがとうございます、カイトさん
Toya
…………ん?
KAITO
え、なになに?
Toya
いえ。カイトさんの後ろの壁に、 また少し変わったフライヤーがあると思って……
KAITO
変わったフライヤー? ……あれ? これ……違うな
Toya
え?
KAITO
これ——楽譜だよ!
Toya
楽譜……?