< BREAK DOWN THE WALL | Story
Toya
この楽譜は……
KAITO
ピアノの楽譜みたいだね
KAITO
うわぁ、難しそうな曲だなぁ。 指が倍あっても弾けなそうだよ
KAITO
なんて曲だろう? えっと、タイトルは……
Toya
……幻想即興曲
KAITO
え?
Toya
これは、ショパンの幻想即興曲の楽譜ですね
KAITO
えっ!? パッと見ただけでわかっちゃうものなの!?
Toya
あ、いえ。他の曲ならすぐにはわからないと思います。 ですがこれは……
Toya
昔、何度も練習していたので
KAITO
あ……
KAITO
そっか……。 そうだったね
KAITO
っていうことは…… この楽譜も、冬弥くんの想いでできたものなのかな
Toya
はい。 きっと、そうだと思います
Toya
(……懐かしいな)
Toya
(あの頃は、毎日ずっとピアノに向かっていた)
Toya
(疲れて動かない指を、必死で動かして…… 目に映る景色が白くぼやけるほど)
Toya
(……本当に苦しかった)
Toya
(音楽というものの存在を 恨めしく思うことすらあった)
Toya
(だが、あの日々があったからこそ、俺は——前に進める)
Toya
(それは…… 俺が謙さんに与えられた課題についても、そうだ)
Toya
……課題……。 そうだ、カイトさん
KAITO
うん?
Toya
以前手伝っていただいた、課題の件なんですが—— 活路が見えました
Toya
もう少しで成果を出せると思います。 楽しみにしていてください
KAITO
冬弥くんがそう言うなら、心配はいらないね!
KAITO
……でもちょっと、残念なんだよな~
Toya
え? 何がですか?
KAITO
冬弥くんがしっかりしすぎてることがだよ!
Toya
…………。 ええと……?
Toya
俺がしっかりしていると、 なぜカイトさんは残念なんでしょうか
KAITO
そりゃ、ボクの活躍の場がなくなっちゃうからさ!
Toya
……?
KAITO
ボクも、課題を頑張るみんなの力に なれないかな~って考えてるんだけど、 冬弥くんには、いろいろ教えるまでもないっていうか……
KAITO
今回も、ひとりでなんとかできちゃいそうだし!
Toya
なる……ほど……
KAITO
まあ、つまりはもっと頼られたいんだよね~。 せっかく想いを叶える手助けをするために ここにいるんだしさ!
Toya
——カイトさんには、もう十分頼らせてもらってますよ
KAITO
……え!? そ、そうなの?
Toya
はい
Toya
俺が悩んでいる時に、笑わせようとしてくれたり、 メイコさんと一緒に美味しいものを食べさせてくれたり……
Toya
そうやって気を配ってくれるおかげで、肩の力が抜けて…… また自分の問題と向き合う気持ちがわいてくるんです
Toya
だから——いつもありがとうございます、カイトさん
KAITO
あはは! いや~、これはボクのほうが元気をもらっちゃったね!
KAITO
でも、そっか。 ちゃんと冬弥くんの力になれてるなら、よかったよ
Toya
ええ。 これからも、頼りにさせてもらいます
KAITO
うん!
KAITO
みんながあの高い壁を超えられるように、 これからも全力で応援するよ!
Toya
はい。 その気持ちに応えて——
Toya
俺は必ず、RAD WEEKENDを超えます! そして——
KAITO
ん? なんか今、音がしなかった?
Toya
たしかに、 あの壁のほうから聴こえたような……
Toya
……! カイトさん、壁にヒビが……!
KAITO
えっ!? わ! しかも結構大きなヒビだね!
KAITO
でも、なんで急に……?
Toya
(……この壁は、おそらく、 俺達のRAD WEEKENDへのイメージが作りだした壁だろう。 そうなると……)
Toya
……そうか。 そういうことか
KAITO
え?
Toya
おそらくですが……
Toya
俺達のこの壁を超えたい——この先に行きたいという決意が、 ヒビを入れたんだと思います
KAITO
なるほど……! じゃあ実際に超えちゃったら、 この壁はドカ~ンって崩れちゃうのかも!?
Toya
ふふ。そうかもしれませんね。 いずれにせよ——
Toya
早くこの壁の向こうに行ってみたいものです