Wonder Stage
Rui
うん。この台本の筋は把握したよ。 『ツカサリオン』はオーソドックスな英雄譚だね
Rui
主人公の王子ペガサスは、 人々を苦しめる魔王を倒すべく旅に出る
Rui
道中、仲間を見つけて、まずは村を苦しめるドラゴンを退治
Rui
そして最後は魔王との一騎打ち。 魔王を倒したペガサスは、英雄として町に戻っていく……と
Rui
うん。司くん、いい演出を思いついたよ。 少し聞いてくれるかい?
Tsukasa
おお、早速か! どんなアイディアだ?
Rui
観客が王子ペガサスに深く感情移入できるように、 過酷な旅の始まりへの、強い決意を表現したい
Tsukasa
ふんふん
Rui
そこで、雷を落とそうと思う
Tsukasa
ふんふ……うん?
Emu
雷!? カッコイイ~!
Rui
だろう? そして丁度ここに、プラズマを発生させる装置が――
Tsukasa
いやいやいや! なぜそんなものがある!?
Rui
こんなこともあろうかと思って用意しておいたんだよ、司くん
Tsukasa
いい顔をするな! だいたい、そんなものどう考えても危険だろう
Rui
装置を舞台上に固定しておけば、お客さんは安全だよ。 触ったら死ぬけどね
Tsukasa
オレのリスクが高い!
ネネロボ
『あーあ。また始まった……』
Emu
また?
ネネロボ
『……類はショーでやったら面白そうなこと思いついたら、 かたっぱしから試しちゃうの』
ネネロボ
『それでよく、クラスメイトを体育館で宙吊りにしたり、 プールで水責めにしたりして……』
ネネロボ
『そんなんだから、最初はショーをやろうって言ってくれた人も、 すぐ離れていっちゃうんだよね』
Emu
ええ~! すっごく楽しそうなのに~!
ネネロボ
『みんなえむみたいなのばっかりなら、 いいのかもしれないけど……』
Tsukasa
そんな危険な演出は絶対にダメだ!
Rui
そんな……。どんな演出にも、 12000%の結果で応えてみせると言ってくれたのに……!
Rui
そういうことなら、残念だけど僕は演出家を辞退しよう。 寧々、あとは頑張って――
Emu
えー! やらないの? ステージで雷がピカーってしたら、と~っても目立つのに!
Tsukasa
!? 目立つ……!!
Tsukasa
た……確かに、目立つな。 雷が落ちるステージなど前代未聞……かなり話題性がある
Emu
お客さん、いーっぱい集まっちゃうかもしれないよ!
Tsukasa
うっ
Tsukasa
……類。 ……ちょっとくらいならやってもいいぞ
Rui
え?
Tsukasa
べ、別に目立つからという理由じゃないぞ。 斬新さは、スターのショーに必要不可欠だからな!
Rui
……へえ。……それじゃあ……
Rui
ドラゴンと戦うシーンで、 火炎放射器を改造した装置を使ってみてもいいかな?
Tsukasa
な、なに!?
Rui
あとは、魔王と戦うラストシーンで、 10メートルほど飛んでみるのはどうだい?
Rui
以前、足元から強風をあてて浮かせる装置を作ってみたんだ。 あのシーンで使ったらきっとおもしろいだろうなあ
Tsukasa
ど、どっちもメチャクチャ危険では……
Tsukasa
だ、だが、どちらも目立つ……! ならばスターとしてはやるしかない……!
Emu
わーい! とっても楽しそう~! 他には他には?
Rui
じゃあせっかくの屋外ステージだし、 滝をつくって……
ネネロボ
『……これ、どう収拾つければいいわけ?』
Tsukasa
ふぅ……気づけば演出の話だけで日が暮れてしまったな……
Tsukasa
明日は朝7時にここに集合! 入園用のスタッフカードは、各自持って帰るように!
えむ・類・ネネロボ
『はーい』
宮益坂
Nene
……珍しく機嫌いいじゃん
Rui
ん? 僕はいつでも上機嫌だよ
Rui
それじゃあ寧々。僕はここで
Nene
え? どこかに寄るの?
Rui
ああ。舞台装置を改良するのに、足りないパーツがあるんだ。 さて、どこから手をつけようかな……?
Nene
……やっぱり、機嫌いいじゃん
翌日
Tsukasa
ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ……
ネネロボ
『へー。口先だけかと思ったら わりと演技もダンスもできるじゃん』
Rui
うーん、とはいえ、それはペガサス王子の戦い方として適切かな? もっと体の使い方を考えてみてほしいな
Tsukasa
じゃあこれで……どうだっ!
Rui
動きは格段に良くなっているね。 ただ……だからこそ、物足りなさを感じるよ
Tsukasa
ハァ、ハァ、ハァ……。 も、もう一歩も動けん……!!
Rui
おやおや、もう音を上げるのかい?
Tsukasa
くっ……!! お前……想像以上にスパルタだな……
ネネロボ
『自称スター、もしかしてスランプ?』
Tsukasa
ええい、そんなわけがあるか! ……だがしかし、何かヒントがほしいな……
Emu
あっ☆ それなら、あそこに行ってみようよっ!
Rui
あそこ? どこかいい場所があるのかい?
Emu
うん! あたしのスマホに『Untitled』って曲があって、 ミクちゃん達のいるセカイに行けちゃうんだよ!
ネネロボ
『……は?』
Tsukasa
『Untitled』って、お前のスマホにもあの曲が……!? えむ、お前まさか、またあの妙な場所へ行くつもりか!?
Emu
うん! いつの間にか入ってたんだ~♪ 司くん! 類くんとネネロボちゃんのこと、 ミクちゃん達に紹介しに行こー!
Tsukasa
あ、おいやめろ――!