< On Your Feet | Story
数十分後
空港
An
……行っちゃったね
Kohane
うん……
Kohane
……やっぱり、見送りに来てよかったな。 言いたいことも全部言えて、スッキリした気がする
An
ふふっ。 こはねってば、バシッて言っててかっこよかったよ!
Kohane
えへへ、そうかな
Akito
ま、お前にしちゃ上出来だったんじゃねえか
Toya
ああ。 ……言ったからには、超えなければな
An
だね! よーっし、頑張ろう!!
Kohane
うんっ!
An
にしても、学校サボっちゃったね~
Toya
ああ……。 今頃は……英語の小テストをやっている頃だろうか……?
An
……なんかそわそわしてるね、冬弥
Kohane
……私は、ちょっとわかるかも。罪悪感っていうか…… 私だけ休んじゃって、学校のみんなに悪いなって
Akito
そうか? べつに問題ねえだろ、1日くらい
Toya
いや、問題はあるだろう
Toya
特に彰人、白石。 ふたりは出なかった分、自習で取り戻せるのか?
Akito
うっ……、それは……
An
ま、まあ、そのことはいいじゃん!
Toya
まったく……
Kohane
……でも、今日学校サボっちゃったこと、 お母さんとお父さんにはちゃんと話さなくちゃな
Kohane
話したあと、大変かもだけど……
Akito
あー……お前の家は、だいぶ叱られそうだな
Kohane
……も、もう練習に参加しちゃだめ!って 言われちゃったらどうしよう……!?
An
……そ、その時は……私達も一緒に謝るよ!
Toya
ああ、そうだな。 もしもの時は、俺達も協力する
Toya
だが……小豆沢も、譲れないものがあってここに来たんだ
Toya
だから怒られはしても…… さっきのようにまっすぐ想いを伝えれば、 きっとわかってもらえるんじゃないだろうか
Kohane
……う、うん! 帰ったら、ちゃんと話してみる……!
Toya
それより……このあとはどうする?
Akito
……今から学校戻っても、 授業には間に合わねえしな。やるならあっちで——
An
……それなら、 WEEKEND GARAGEに行くのはどう?
Kohane
え……いいの?
An
うん。おじさんにズバっと言ったこと、 ちょっと父さんにも話したいしね
Toya
……そういえば、最近はセカイで集まってばかりで、 謙さんのところにも顔を出せていなかったしな
Kohane
うん! それじゃあ……行こう!
数時間後
WEEKEND GARAGE
An
ただいま!
An
……って、あれ……?
An
……なんか……お店の中がスッキリして……?
Kohane
え?
Kohane
……本当だ。 これって……
An
あ……父さん! 外の看板、オープンのままだったけど……どうしたの?
杏の父
ん……ああ、しまった。 看板を戻し忘れてたか
杏の父
しかし……お前達、もう帰りか? 学校帰りにしちゃ少し早いんじゃないか
杏の父
さては——
Kohane
あ……えっと……
Kohane
……ごめんなさい! 実は……私がみんなに話して、 大河さんの見送りに行ってきたんです……!
杏の父
嬢ちゃんが?
An
こ、こはねは悪くないよ! 私がそれいいね!って乗ったんだし!
An
……ごめん。勝手に休んじゃって……
杏の父
まったく……学生の本分は学業だろうが
杏の父
しかし、やっちまったもんは仕方ない。 ……お前らにも、譲れないものがあるだろうしな
杏の父
ただ、こういうことはちゃんと話をとおしてからやれ。 理由があるなら、頭ごなしに反対したりはしない
An
うん……わかった
杏の父
言っておくが……お前達もだぞ?
An
あっと……それでさ、父さん。 お店の椅子と机、ずいぶん減ってる気がするんだけど……
杏の父
……ああ。店を整理しててな。 今、カップをまとめてたところだ
Kohane
整理、ですか……?
杏の父
そうだ。——この店を、一時休業することにした
An
えっ!? 休業!?
Akito
な、なんでまた……
杏の父
お前達、RAD WEEKENDを超えるんだろ?
杏の父
なら、オレも手伝おう
Kohane
え……?
杏の父
お前達が覚悟を決めたんだ。 ならこっちも、本腰入れるのが筋ってもんだろう
杏の父
それが……これまで真実を隠してきたオレなりの、ケジメだ
An
あ……
杏の父
それにこれは、オレ自身のためでもある
杏の父
あの日凪が未来に託した夢が、この街でどう育っていくのか……。 それを——オレ自身も見たいんだ
杏の父
ってわけで、しばらくこの店は閉めることにしたわけだ
杏の父
まあ、モーニングとランチだけ営業するのも考えたが…… 中途半端は柄じゃねえ。しばらく全面休業だな
An
で、でも、母さんは……
杏の父
ちゃんと、母さんとも話しあってる
杏の父
……この件は、ずっと気にしてたからな、 『さっさとケジメをつけろ』と言ってくれた
杏の父
現役時代の貯えもある。 しばらく店閉めたとしても、食いっぱぐれることもねえ
杏の父
それにオレも、本業はプレイヤーだ。 人に教えるってことには慣れてねえ。 使える時間は、全部使う覚悟でいかねえとな
An
……本気なの、父さん……?
杏の父
オレはここで、オレが教えられるすべてを、お前達に叩き込む
杏の父
つまり——これから、オレの持つすべてを お前達に賭けさせてほしいんだ
An
…………!
杏の父
ただし……やるなら、歌も体づくりも容赦なしだ。 毎日、血反吐を吐くくらいやってもらう
杏の父
……どうだ、やるか?
Akito
……謙さんが、オレ達に……
Akito
そんなの——答えなんてひとつしかねえ
Toya
ああ。迷う余地はない
Kohane
うん!
An
——望むところだよ、父さん!
杏の父
決まりだな
杏の父
今日をもって、この店は休業だ
Kohane
(この場所で—— WEEKEND GARAGEから、また始まるんだ)
Kohane
(杏ちゃんのお父さんがあんなこと言うくらいだから、 練習、きっとすごく厳しいんだろうな)
Kohane
(もしかしたら、 怖くて、逃げ出したくなっちゃうくらい……)
Kohane
(でも……)
Kohane
(私……このお店に入って、本当にいいのかな……)
Kohane
…………
Kohane
ううん。 またあの歌を聴きに行くって、決めたんだから!
Kohane
だから……開けなくちゃ!!
Kohane
(今までも、怖いって思うことは、たくさんあった)
Kohane
(それでも……)
Kohane
(勇気を出して扉を開けてみたら、 見たことのない景色がたくさんあって——)
Kohane
(——その先にはいつも、嬉しいことがあった。 だから怖くても、前に進んでよかったって思えたんだ)
Kohane
(だから……大丈夫)
Kohane
(だって、ミクちゃん達が教えてくれた——)
ミク
——こはねは本当に、変わったね
ミク
こはねには——シンガーとしてのプライドが生まれてたんだよ
Kohane
(今はこの悔しさが……私を、支えてくれる)
Kohane
(私は——前に、進める!)
Kohane
(みんなと、超えるんだ。 すごく高い壁だけど、みんなとなら……!)
An
……こはね……
Kohane
——え? なに、杏ちゃん?
An
ううん。 ただ……すっごく気合い入ってるなって!
Kohane
……うん!
An
じゃあ、やろう! 私達で絶対、RAD WEEKENDを超えよう!
Kohane
(……こんなに、ドキドキすること……他にないだろうな)
Kohane
(あの日……この通りで迷った日、 このお店に来て、本当によかった)
Kohane
(……杏ちゃんの歌を聴いてドキドキした この場所から——もう一度、始めよう!)
Kohane
みんな、頑張ろうね!