25ji Rin
『……わたしは、絵のことはよくわからない』
25ji Rin
『わからないけど……絵名を見てると、 わたしが思うよりもずっと——大変なのかなって思う』
25ji Rin
『でも……ちょっと、絵名らしくない』
Ena
……え?
25ji Rin
『今までの絵名なら、“いいのかな”って思うんじゃなくて—— “やるんだ”って思って、絵を描くと思うから』
Ena
あ……
Ena
……私、そんな脳筋なイメージ?
Ena
まあ……そりゃ、うまくなるんなら 描くしかないけどさ
25ji Len
『描くしか……』
25ji Len
『あ……』
25ji Len
『じゃあ、絵名ちゃん。 その……ぼく達を、描いてくれない?』
Ena
え、レン達を……?
25ji Len
『う、うん。この前、まふゆちゃんをモデルに描いた時、 何か掴めたって言ってたでしょ?』
25ji Len
『だから、ぼく達も力になれるかもって』
Ena
レン……
Ena
……ふふ、ありがと。 それならせっかくだし、スケッチさせてもらおっかな
25ji Len
『うん、任せて……!』
Ena
じゃあ、どこで描こっか。 ちゃんとスケッチするなら、やっぱりセカイに——
25ji Rin
『……それなら、あそこに行くのは?』
Ena
あそこ?
25ji Len
『あ……そうだね。 絵名ちゃんの練習になるかも……!』
Ena
ちょっと、どこのこと言ってるの? 全然わかんないんだけど
25ji Rin
『来たらわかる』
25ji Len
『セカイで待ってるね……!』
誰もいないセカイ
???
Ena
え……何、ここ。 こんな場所なかったよね?
25ji Len
この前、セカイに新しくできたみたいなんだ
25ji Rin
うん
25ji Rin
絵名、前に水を描くのは難しいし、 勉強になるって言ってたから
Ena
あ……
Ena
そういえば、リン達には話してたっけ
Ena
じゃあ、ここで描かせてもらおっかな。 不思議な景色だし、練習になりそう
Ena
リンとレンは湖の近くにいてくれる? ポーズは任せるから
25ji Rin
任せられると、困る
Ena
んー、じゃあ座って!
25ji Len
……わ、わかった
Ena
(……やっぱり、不思議な場所だな)
Ena
(いきなり、こんな場所ができるなんて)
Ena
(……でも、そうだよね)
Ena
(母親とのことで、 まふゆもいろいろ考えてるみたいだし……)
Ena
(こういう場所ができるくらい、 想いの変化があったのかな)
25ji Len
……絵名ちゃん、どうしたの?
Ena
なんでもない。 ていうか、ポーズ変えちゃだめ!
25ji Rin
絵名が早く描かないから
Ena
今描いてるってば
Ena
……あれ?
Ena
なんか……聴こえる……?
25ji Len
え……?
Ena
これって……奏の曲? 湖から聴こえてくるけど……
25ji Len
あ……うん。 湖の中から、ときどき聴こえるんだよ
Ena
え、湖の中から? でも、なんで……そんなこと、あるの?
Ena
もしかして、中に何かあるのかな。 プレイヤーとか……
Ena
……あ……
Ena
湖の中に——
25ji Len
絵名ちゃん。 そんなに乗り出したら危ないよ
Ena
わかってる。でも……
Ena
湖の中に、私の絵が見えたような……
25ji Rin
絵……? 何も、見えないけど……
Ena
私も見えたのは一瞬だけだけど、たしかにあれは……
Ena
ちょっと、確認してみる
Ena
っと、掴めるかな……
Ena
……ダメ。全然、指にも引っかからない
Ena
んー、絶対そうだと思ったんだけど……。 見間違いだったのかな
25ji Rin
それって、どんな絵だったの?
Ena
え? えっと、前にまふゆをデッサンしたやつだけど……
25ji Len
あ……まふゆちゃんが、絵名ちゃんの家に 泊まった時に描いた、あの絵?
Ena
うん、多分それ。 それが湖の中にあるなんて、 現実的に考えるとあるわけないんだけど……
25ji Rin
…………
25ji Rin
もしかすると——まふゆの心の中に 絵名の絵があるから、かもしれない
Ena
え……?
25ji Rin
この湖は、まふゆの想いでできた場所だから
25ji Rin
まふゆが、その絵を見て 何か心に響いたものがあったのなら—— 想いから生まれたこの湖に、反映されたのかも
Ena
私の絵が、まふゆの心に……
Ena
ほんと、不思議なセカイ
Ena
(……まだ足りない、もっとうまくならないと 先のことも考えられない、って思ってたけど……)
Ena
(もし、本当に……まふゆの心の中に、私の絵があるのなら)
Ena
(まふゆの心に、響く絵を描けたのなら——)
Ena
(私の絵は……誰かの心に届くんだ)
Ena
(それなら——)
Ena
……一歩ずつ、進んでいこう