Chapter 6: Honestly, I Don't Get It
わからない、本心 (? (edit))
わからない、本心 (? (edit))
数十分後
絵名の部屋
Len
『わあ……。こうやって描いてくんだね。 すごいなあ……』
Mafuyu
……絵名、私はどんな顔をすればいいの?
Ena
別にいつもと同じでいいよ
Mafuyu
わかった
Ena
(まさか、本当にまふゆをモデルに描くことになるなんてね。 それにしても……)
Ena
(ほんと、表情ないな……。石膏像描いてるみたい)
Len
『……絵名ちゃん、本当に絵が上手……』
Len
『こんなにうまいのに、まだ頑張ってるなんて すごいなあ……』
Ena
すごくなんてないけどね
Ena
私はただ、もっとうまくなりたいだけ
Ena
まあ、描いても描いてもボロボロに言われるし 悩むことばっかで、毎日キツいけど
Len
『絵名ちゃん……』
Ena
でも、これが私のやりたいことだし、 自分で決めたことだから
Ena
誰になんて言われてもやめるつもりはないし、 やり続けるつもり
Mafuyu
…………
Ena
まあ、やりたいことやってるせいで、 お母さんには心配かけてるかもしれないけどさ
Ena
こうやって絵を描いてる自分が、 一番自分らしいって思うんだ
Mafuyu
……自分、らしい……
Ena
そう。だからあんたも、ちゃんと言ってみたら? 自分がやりたいこと
Ena
シンセのことだって——
Mafuyu
……私も、やりたいって言った
Ena
え……
Mafuyu
勉強もやらなきゃいけないけど、 音楽も……やりたいって
Ena
え、そうだったの!?
Ena
(まふゆ……ちゃんと言ってたんだ……)
Mafuyu
お母さんも……やりたいことをしなさいって、言ってくれた
Ena
本当? じゃあ——
Mafuyu
でも——後悔しないように、って……
Ena
——え?
Mafuyu
将来、後悔しないように考えたほうがいいって ……言われたの
Ena
……は? 何それ。 音楽続けたら後悔するってこと?
Mafuyu
……そういうことじゃないと思う、けど……
Mafuyu
きっと、お母さんは……私の将来を心配してるんだと、思う
Mafuyu
医者になればたくさんの人を助けられる。 それに、経済的にも困ることはないし……
Ena
それは……たしかにそうかもしれないけど……
Mafuyu
今、勉強を疎かにして受験に失敗したら 大変なことになるって……お母さんはわかってるから
Mafuyu
だから——
Mafuyu
だから……私は……
Mafuyu
…………音楽を、やめるって、言った
Ena
…………!
Ena
は!? あんた、そんなこと言ったの!?
Mafuyu
……うん
Ena
本当に——それでいいと思ってんの? あんた自身、納得してるの?
Mafuyu
…………
Mafuyu
——今は我慢して、受験勉強をして…… 大学生になれば、また……音楽ができるかもしれない
Mafuyu
……だから……今は……
Ena
でも……あんた、結局私達と一緒にやってるじゃない
Mafuyu
……どうしてなのか、自分でもわからない
Mafuyu
……前、絵名に『本当にお母さんが正しいと 思ってるなら、セカイに来てない』って言われて……
Mafuyu
たしかに、そうだと思った
Mafuyu
……どうして私は、お母さんがいいって言ってることと 逆のことをしてるんだろうって——思ったの
Ena
……だからそれは、あんたが“そうしたい”って 思ってるからでしょ?
Ena
音楽をやりたい、セカイに行きたい。その気持ちは、 親に何言われても譲りたくないって思ってるから ニーゴの活動をするんでしょ?
Ena
それは当たり前のことじゃない
Mafuyu
当たり前……?
Ena
そう
Ena
私は——描きたいから描く。 その先に私の幸せがあるって、信じたいから
Ena
……あんただって、親が決めた幸せじゃなくて 自分自身の幸せがあるって、どっかで思ってるんじゃないの?
Mafuyu
……私自身の……
Mafuyu
でも、私は——
Len
『まふゆ、ちゃん……』
Ena
(……わかんないな……)
Ena
(親が大事なのはわかるけど……。 どうして、自分がやりたいことに向き合えないんだろ)
Ena
(話を聞いてても、まふゆ自身にはちゃんと やりたいことがあるってわかるのに)
Ena
(……でも、もし私がまふゆと同じ立場だったら ——違ってたのかな)
Ena
(普段から『あなたのために』って言われて、 親の考えを押し付けられてたら——)
Ena
(私も、まふゆみたいに……なってたのかな)
Ena
——まふゆは、どうしたいの? 親のこととか関係なく
Mafuyu
…………わからない
Mafuyu
……でも、みんなと一緒に……曲を作りたい
Ena
……まふゆ……
Ena
……そっか
Ena
——じゃあ、私も手伝う。 ニーゴの仲間として
Ena
まあでも、あんたは自分らしくやれって言っても 『はいやります』って感じにはならないだろうし
Ena
……まずは練習として、今日くらいは 思いっきりやりたいことやれば?
Mafuyu
え……
Ena
あっ、てかもう25時じゃん! 絵描いてて忘れてた……。作業しなきゃ!
Mafuyu
作業……?
Ena
ニーゴの! あんたもやるでしょ?
Mafuyu
……して、いいの?
Ena
は? 当然じゃない。 奏は曲仕上げてきてるだろうし、 まふゆの歌詞がないと、私も瑞希も困るんだからね
Ena
ナイトコード、つなげるよ
Mafuyu
…………うん