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Chapter 7: ? (edit)
まずは一緒に大きな夢を (Mazu wa Issho ni Ooki na Yume o)
まずは一緒に大きな夢を (Mazu wa Issho ni Ooki na Yume o)
Emu
ここって……
Nene
なんか、普通の場所っていうか……。
目立つアトラクションもメリーゴーランドくらいしかないし
目立つアトラクションもメリーゴーランドくらいしかないし
Emu
あれ?
Nene
どうしたの? えむ
Emu
このメリーゴーランド……、
おじいちゃんみたいな感じがする!
おじいちゃんみたいな感じがする!
Tsukasa
おじいちゃん?
Emu
うん!
Emu
あったかくって、
見てるとニコニコしちゃって——
見てるとニコニコしちゃって——
Emu
ワンダーステージを見てる時みたいに、
おじいちゃんが隣にいてくれるような気がするんだ
おじいちゃんが隣にいてくれるような気がするんだ
Riley
フフ、さすがはえむさんだね
Riley
実はこのエリアの原案になった映画『スマイリー』は、
楽之介——えむさんのおじいさんと一緒に作ったものなんだよ
楽之介——えむさんのおじいさんと一緒に作ったものなんだよ
Emu
えっ?
Riley
僕と楽之介が出会ったのは、今からもう
20年も前のことなんだ——
20年も前のことなんだ——
Riley
——僕は、元々俳優志望でね。
しかし残念ながら、そちらで大成することはできなかった
しかし残念ながら、そちらで大成することはできなかった
Riley
けれどせめてエンターテインメントに関わっていたいと思って、
映画会社に入ったんだ
映画会社に入ったんだ
Riley
そこで長い下積みを経て信頼を勝ち得ていってね、
初の映画プロデュースに挑戦することになった
初の映画プロデュースに挑戦することになった
Riley
みんなにワクワクドキドキしてもらえるような
映画を作ろうと、はりきって1作目にとりかかったんだが——
映画を作ろうと、はりきって1作目にとりかかったんだが——
Young Riley
…………
Young Riley
なぜだ……。
どうして、ありきたりな内容になってしまうんだ……
どうして、ありきたりな内容になってしまうんだ……
Young Riley
予算もスケジュールもしっかり用意して
優秀なスタッフも手配した。
完璧なプランのはずなんだが……
優秀なスタッフも手配した。
完璧なプランのはずなんだが……
Young Riley
……駄目だ。
また、一から作り直さなくては……
また、一から作り直さなくては……
Young Riley
く……!
期日が迫っているのに、クオリティが上がらない……!
期日が迫っているのに、クオリティが上がらない……!
Young Riley
一体どうしたらいいんだ……。
あんなに用意した予算も、撮り直しのせいで
当初の予定よりオーバーしているし……
あんなに用意した予算も、撮り直しのせいで
当初の予定よりオーバーしているし……
Young Riley
子供の頃見たような、夢のある映画を作りたいんだ。
それなのに、どうして……
それなのに、どうして……
映画関係の友人
よう、ジャン。
映画作り、ずいぶん難航してるようじゃないか
映画作り、ずいぶん難航してるようじゃないか
Young Riley
ああ……君か。
監督業のほうは順調みたいだね
監督業のほうは順調みたいだね
Young Riley
こっちは全然だ。
しっかりとプランを立てたんだが、
まるで思うような映画にならない
しっかりとプランを立てたんだが、
まるで思うような映画にならない
映画関係の友人
……ふむ。
それなら、アドバイザーを招くのはどうだい?
それなら、アドバイザーを招くのはどうだい?
Young Riley
アドバイザー?
映画関係の友人
ああ。業界で噂になっている、
ある名アドバイザーがいるんだ
ある名アドバイザーがいるんだ
Young Riley
ふむ……一体どういう人物なんだ?
映画関係の友人
俺も詳しくは知らないが、日本の老人らしい。
見せた映画を気に入ると、
的確なアドバイスをくれるんだそうだ
見せた映画を気に入ると、
的確なアドバイスをくれるんだそうだ
映画関係の友人
友人に頼めば連絡することはできるが……どうする?
Young Riley
……日本の老人か……
Young Riley
(……正直、あまり期待はできないが……。
かといって、何もせずこのまま期日を迎えるわけにもいかない)
かといって、何もせずこのまま期日を迎えるわけにもいかない)
Young Riley
……わかった。
その人物を呼んでもらってもいいかい?
その人物を呼んでもらってもいいかい?
映画関係の友人
ああ、それじゃあ頼んでみるよ!
???
やあ!
この度はお招きいただきありがとう!
この度はお招きいただきありがとう!
Young Riley
いえ、こちらこそありがとうございます。
私はジャン・ライリーといいます。あなたは——
私はジャン・ライリーといいます。あなたは——
Rakunosuke
私は楽之介さ! よろしく、ジャン!
Rakunosuke
さてさて、早速映画を見せてもらってもいいかな!?
とても楽しみにしてたんだ!
とても楽しみにしてたんだ!
Young Riley
あ、ああ……
Young Riley
(ずいぶんと子供のようにはしゃぐ老人だな)
Young Riley
(本当に、彼がアドバイザーで大丈夫だろうか……?)
Rakunosuke
ふ~~~~む
Young Riley
ぜひ、映画を見た率直な意見を聞かせてほしい
Young Riley
どのあたりに問題があると思う?
予算と期限の許す範囲で直していこうと思う
予算と期限の許す範囲で直していこうと思う
Rakunosuke
そうだね……単刀直入に言うならば……
Rakunosuke
この映画には——もっと夢があるんじゃないかい!?
Young Riley
は?
Rakunosuke
ジャン、君の夢はこれですべてなのかい!?
もっと君の頭にはいろいろな可能性があるんじゃないか!?
もっと君の頭にはいろいろな可能性があるんじゃないか!?
Young Riley
ええっと……それは一体、どういう意味で……?
Rakunosuke
たとえば、オープニング!
Rakunosuke
設定を見る限り、主人公のスマイリーが住む“楽園の島”は、
いつでも笑顔でいられる夢の島なんだろう?
いつでも笑顔でいられる夢の島なんだろう?
Rakunosuke
なら君は、もっと理想的な島をイメージしていたはずだ!
キラキラピカピカ! ワクワクドキドキ! 違うかい!?
キラキラピカピカ! ワクワクドキドキ! 違うかい!?
Young Riley
そ、それはたしかに……。
だが……
だが……
Rakunosuke
それなら、もっともっと夢をつめこまなければ!
Rakunosuke
島に住む人々も、本当にCGでいいのかな!?
幸せそうに住む人間達を撮りたかったんじゃないのかい?
幸せそうに住む人間達を撮りたかったんじゃないのかい?
Young Riley
ああ、そこは本物のエキストラを使いたかったんだが……
Rakunosuke
やはり! ならば1000人! エキストラを雇おう!
Young Riley
せ、1000人!?
しかしエキストラを募っているような時間も金も——
しかしエキストラを募っているような時間も金も——
Rakunosuke
最高のクオリティの映画にしようじゃないか!
わっはっは!
わっはっは!
Young Riley
(な、なんだこの人は……!
それができればこんな苦労はしていないんだぞ!)
それができればこんな苦労はしていないんだぞ!)
Young Riley
(だが……有能なアドバイザーという話だ。
もしかするとこんな無茶を言うのも、何か考えがあるのか……?)
もしかするとこんな無茶を言うのも、何か考えがあるのか……?)
Rakunosuke
さあジャン!
君の夢をもっと聞かせてくれ!
君の夢をもっと聞かせてくれ!
Young Riley
あ、ああ……
Rakunosuke
うーむ、このシーンは迫力がほしいね。
いっそ実際に城のセットを作ってみたらどうだい?
いっそ実際に城のセットを作ってみたらどうだい?
Young Riley
城を!?
たしかに白亜の城にしたいという気持ちはあったけれど
しかし……
たしかに白亜の城にしたいという気持ちはあったけれど
しかし……
Rakunosuke
ああ、クライマックスがこれでは、
観客もすーっぱい顔になってしまうねえ……
観客もすーっぱい顔になってしまうねえ……
Rakunosuke
ジャン! 君が本当にやりたいクライマックスは
他にあるんじゃないかい?
他にあるんじゃないかい?
Young Riley
それは……
Rakunosuke
ん? 草案をまとめたファイルには、
ここで楽園の島がすべて崩れ落ちると書いてあるじゃないか!
ここで楽園の島がすべて崩れ落ちると書いてあるじゃないか!
Rakunosuke
とてもいいアイディアだよ!
これを形にしていこうじゃないか!
これを形にしていこうじゃないか!
Young Riley
…………
Rakunosuke
エンディングはこの映画のすべての喜びを詰めこもう!
そうすれば、とてもワンダフルな——
そうすれば、とてもワンダフルな——
Young Riley
——もう、いい加減にしてくれないか!
Rakunosuke
え?
Young Riley
さっきから、ずっと夢のようなことばかり……。
これは夢を売るとはいえビジネスなんだ!
予算や時間の都合があるとわかるだろう!
これは夢を売るとはいえビジネスなんだ!
予算や時間の都合があるとわかるだろう!
Young Riley
僕だって本当は、夢見ているすべてを形にしたい!
この頭の中にあるもので、世界中の人を喜ばせたい!
この頭の中にあるもので、世界中の人を喜ばせたい!
Young Riley
だが現実問題、そんなことはできないんだ!
Young Riley
実現できない夢のようなことばかりを言って……、
あなたは本当に大人なのか!?
あなたは本当に大人なのか!?
Rakunosuke
ああ。大人だよ
Rakunosuke
家族にはよく、子供のようだと言われるけどね
Young Riley
大人だというなら——
Rakunosuke
大人は、夢を見てはいけないのかい?
Young Riley
え?
Rakunosuke
僕はね、こう思うのさ
Rakunosuke
本当に夢を見る者しか、
誰かに夢を与えることはできないってね
誰かに夢を与えることはできないってね
Young Riley
…………
Rakunosuke
まずは、一緒に大きな夢を見てみようじゃないか、ジャン
Rakunosuke
もちろん輝かしい夢を見たあとは、
びっくりするほど恐ろしい現実が待っている
びっくりするほど恐ろしい現実が待っている
Rakunosuke
だけどその道行きも、胸の中で夢が輝き続けていれば
そこまでつらいものじゃない。
少なくとも僕はそう思うよ
そこまでつらいものじゃない。
少なくとも僕はそう思うよ
Rakunosuke
だから——僕と一緒に、夢を見ないかい?
Young Riley
一緒に、夢を……?
Rakunosuke
実際のところ、僕は君より長く夢を見ているからね。
恐ろしい現実との戦いには、慣れているのさ
恐ろしい現実との戦いには、慣れているのさ
Rakunosuke
今回の映画制作費の工面とスケジュール調整については、
僕も一緒に考える。なんだったら協力もするさ
僕も一緒に考える。なんだったら協力もするさ
Rakunosuke
こう見えて僕は、ちょっと顔の利く老人でね?
Rakunosuke
だから——まずは夢のことを考えよう。
苦しむのはそのあと、一緒にだ
苦しむのはそのあと、一緒にだ
Young Riley
……!!
Rakunosuke
さあ、ジャン。
まずはもう一度、手放しかけた夢を見せてくれ!
まずはもう一度、手放しかけた夢を見せてくれ!
Rakunosuke
そして現実に戻ったら、
一緒に頭を痛めようじゃないか!
一緒に頭を痛めようじゃないか!
Young Riley
楽之介……
Young Riley
(……夢か)
Young Riley
(たしかに僕は、現実を前にして、
思い描いていた夢を忘れかけてしまっていたようだ)
思い描いていた夢を忘れかけてしまっていたようだ)
Young Riley
(……ありきたりな映画になってしまうはずだ)
Young Riley
——ありがとう、楽之介
Young Riley
僕は、僕の夢を、もう一度思いだしてみようと思うよ